NYを拠点に活動するシンガーソングライター June McDoom が、デビューアルバム『Follow The Light』を Jagjaguwar から 10/16 リリース!リードシングル「Without You」のミュージックビデオを公開しました。本作が描くのは、眠りへ落ちる直前や、朝のアラームが鳴る前にだけ訪れる、現実と夢のあいだのような時間だ。どこか懐かしく、それでいてまだ知らない場所へ進んでいく感覚。『Follow the Light』は、幼い頃の深い眠りの中を探索しながら、目覚めた先で新しい自分に出会うような作品に仕上がっている。
June McDoom は、南フロリダのジャマイカ系家庭で育った。大工であり音響にも強い関心を持っていた父親は、自作のスピーカーと複数のサウンドシステムを所有し、家の中では常に重低音が鳴っていたという。その一方で、彼女は自室でフォークのレコードを聴き、繊細なハーモニーに魅了されていった。ジャマイカ音楽の低音と、フォークの柔らかな歌声。フロリダの湿った空気の中で、二つの音楽が自然に混ざり合っていたことが、現在の彼女のサウンドの原点になっている。
彼女がフォーク音楽に出会ったのは、『サウンド・オブ・ミュージック』のキャスト盤や、映画『卒業』で使われた Simon & Garfunkel の楽曲などを通じてだった。周囲に同じ音楽を聴く人はおらず、両親からは「眠くなる音楽」と呼ばれていたが、その孤独な環境が、歌詞よりも先にハーモニーそのものを愛するきっかけになったという。また、彼女の家系にはジャマイカ音楽の伝統も流れている。祖父の Colin Smith は、バンジョーやギターを演奏し、ルンバ・ボックスを自作していた著名なメント音楽家だった。メントは、スカ、ロックステディ、レゲエ、ダブへとつながるジャマイカ最古の農村フォーク音楽の一つであり、彼女に初めてギターを渡したのも祖父だった。
June McDoomという活動名にも家族の記憶が宿っている。本名は Alyssa だが、「June」は祖母 Joan の愛称から取ったものだという。長い間、ジャマイカの音楽は単に家族の音として存在していた。しかし、外の世界で生活し、愛し、学び、再び自分のルーツへ戻ったとき、それが自分自身の音楽でもあったことに気づいた。Alton Ellis のレコードを聴いた瞬間、探し続けていた音が、実は幼い頃からそばにあったのだと理解したという。
『Follow the Light』は、レゲエやダブのアルバムでも、純粋なフォーク作品でもない。フォークのハーモニーを、ダブのリズムと低音の上に重ねた、境界に位置する音楽だ。制作は、長年のパートナーである Evan Wright とともに、時間をかけて手作業で進められた。ほとんどの曲は June の歌声とギターだけの状態から始まり、Evan が楽器を重ね、June が複数のボーカル・ハーモニーを加えていった。ドラムは、Ticklah 名義でも知られるプロデューサー Victor Axelrod とともに、ブルックリンの地下スタジオで録音。その後、自宅スタジオでテープとデジタルの両方を使いながら、音を丁寧に積み上げた。
サウンドにはダブやウォール・オブ・サウンドの低音感覚に加え、Dionne Warwick、Minnie Riperton、Pentangle、そしてCocteau Twins の『Victorialand』を思わせる霞んだギターの影響が入り込んでいる。リードシングル「Without You」は、その制作姿勢を象徴する一曲だ。当初は生ドラムが曲全体を貫くシンプルなアレンジだったが、Cocteau Twins からの影響を深めるにつれて、ダブのベースラインとシューゲイズのきらめきが交差する楽曲へ変化していった。
Juneは完成度を追求し、1日12時間をミックス作業に費やすこともあった。クリスマスに曲を聴いた両親から「声が十分に聞こえない」と指摘され、ミックスを最初からやり直したという。しかし、そうした膨大な作業を感じさせないほど、アルバムには余白が残されている。感情を一方的に説明するのではなく、聴き手自身が音楽の中へ入り込める作品だ。アルバムの中心にいるのは、祖母のAggieである。家族の中心だった彼女は、June が迷ったときに進む方向を示す存在でもあった。「Memory」は祖母を思って書かれた楽曲であり、『Follow the Light』というタイトルの “光” も、愛する人が姿を失ったあとも残し続けるエネルギーを表している。
一方、「Outside the Window」では、より内省的な問いが描かれる。人間には、家族や友人、恋人、観客など、それぞれの前で異なる自分が存在する。どの自分が本物なのか。誰に対して誠実であるべきなのか。過去の自分と交わした約束を、現在の自分は守れているのか。親密で個人的な作品を世に出すことは、内面を守りながら、公の場で一人の人間になる方法を学ぶことでもある。
未来の自分は、現在の自分がいつか出会う祖先である
『Follow the Light』で June McDoom は、曲を重ねながら、自分が何者なのかをリアルタイムで探している。人は一つの固定された存在ではない。過去に手放した自分、未来に出会う自分、そして自分をここまで導いてきた家族や先人たちを、すべて抱えて生きている。暗闇と光、過去と未来、フォークとダブ。相反するように見えるものを排除せず、一つの音の中で共存させること。それが『Follow the Light』の核心にある。
暗闇の中で、私たちは光の方向へ顔を向ける。光が見えなければ、手探りでその場所を探す。そして、その温かさが顔に届いたとき、ゆっくりと目を開いていく。













