Zach Hill & Lucas Abela、デビューアルバム『Bag of Max Bag of Cass』を Warp Records から 10/31 リリース!ニューシングル「Combat Boxes」のミュージックビデオを公開しました。本作『Bag of Max Bag of Cass』は、Zach Hill と Lucas Abela による共同作品です。
Hill は、Death Grips の創設メンバーとして知られる一方で、音楽界における巨人であり、速度と構成デザインにおいて類まれな才能を持つ革新的なドラマーです。Abela は世界のフリー・インプロヴィゼーション界で独自の道を切り拓き、文字通り増幅したガラス片から全宇宙を紡ぎ出します。これは曲というより、広大でテクスチャー豊かな音のフィールド。ここではノイズが集中と緊張の音響環境となり、変動の激しさの中にも不思議な静けさが宿っています。Hill のリズムは Abela の持続的で裂けるような倍音に屈折し、聴く者を絡め取る迷宮的な建築物を形作ります。
出会い
Zach: 15年前、シドニーで即興デュオをやる数時間前に出会ったんだ。当時は Boredoms のツアーで現地入りしていて、ちょうどオフの日だった。Lucas はそこに住んでいたからね。
Lucas: 最初は 2010 年に Boredoms がシドニーを通ったとき。Zach と Hisham がドラマーをしていて、ふたりとも他のプロジェクトをやっていたのを知っていたから、私が企画していたイベントでサイドショーをやらないかと声をかけた。ふたりとも快諾してくれて、Zach が「デュオをやらないか」と言ってきたんだ。もちろん即答で「やる」と言ったよ。その様子は YouTube にも上がっている。その7年後、US ツアーを組んでいたときに Zach に「サクラメントでライブをやれるか」と聞いたら、「やらなくていいから Death Grips のレコーディングに来い」と言われてね。ショーの合間にスタジオを訪ねて即興で演奏したものが、最終的に『Year of the Snitch』に収録された。
なぜ一緒にやろうと思ったのか?
Zach: 不快感……ジュラシック・デジャヴ。
Lucas: 長くなるけど、コロナ禍で自分の音楽が進化したことがきっかけなんだ。ロックダウンが始まったとき、配信ライブを頼まれるようになったけど、自分の音は画面越しだとまったく伝わらないと気づいた。私はライブ空間そのものを使うアーティストで、ガラス片と部屋の響きの相互作用がオリジナルの音を形作っていた。でもロックダウン中はそれができないから、ガラスの処理を考え直す必要があった。
最初はエフェクトチェーンを2系統並列で使っていたけど、ロックダウン初期は手持ちのペダルを総動員して最大6チェーンまで実験した。「ペダルをモジュラーシンセみたいに使っている」と言われ、調べてみたらモジュラーはどんな音にも使えると知ったんだ。特にエンベロープフォロワーを大量に組み合わせれば、自分のダイナミクスでほぼすべてを制御できると気づいた。つまりガラス片が音と変調を同時に生み出す仕組み。それがポストCOVIDの自分のガラス・リグの基盤になった。
ここで「もし自分じゃなくて、別の音楽家に自分をモジュレートしてもらったら?」と思いついた瞬間に Zach の名前が浮かんだ。彼のドラムがリアルタイムで私のガラス信号を切り裂くイメージだけで、ものすごくワクワクしたんだ。
レコーディングと作品化までの流れ
Zach: 2023年10月末、ロサンゼルスの David Scott Stone のホームスタジオで2日間、即興セッションを録音した。私はV-Drumsを演奏し、それを Lucas のガラス・セットアップに通した。同年末から2024年にかけて、その生録音を自宅で再処理してアルバムの形に仕上げた。
Lucas: 2日間のセッションで、私はZach の電子ドラムの信号を自作のスペクトラル・エンベロープ・フォロワーに入力した。10チャンネルのクロスオーバーと10のエンベロープフォロワーを組み合わせて、20種類の制御電圧を生成し、それをMungoのD0(ディレイ)とG0(グラニュラー)の2セットにランダムでパッチングした。オフセットを適当に調整して弾き直し、その都度パッチをリセットする……そうやって『Bag of Max Bag of Cass』は録音されたんだ。
実はこれは2作目で、最初は Zach が送ってきたステム(バス・スネア・タム・シンバルを分離)を実験的にサンプリングしてパッチを考えていた。途中で「ガラス信号で Zach のドラムをピッチダウンして制御したら面白い」と思いつき、試したものをZachに送ったら TikTok 用に映像を作り始めた。彼が気に入ったんだと分かったので、私のレーベル dualpLOVER から7インチを自主リリースした。この「サンプルを減速してガラス信号で制御する」発見は自分のソロセットにも取り入れていて、最近はポップソングのボーカルをガラス音の混沌の下でコントロールする手法でダブルアルバムのカバー集も出したんだ。
『Bag of Max Bag of Cass』は、ノイズと即興の境界を超えた音響体験であり、両者の探求心がぶつかり合って生まれたサウンド・アーキテクチャそのものです。