Sam Wilkes、ニューアルバム『Public Records Performance』を 10/17 リリース!

|

実力派ジャズ・ベーシスト Sam Wilkes、ニューアルバム『Public Records Performance』を 10/17 リリース!先行曲「I Said Yes」を公開しました。2022年8月初旬、蒸し返すような暑さのニューヨーク。ベーシストで作曲家の Sam Wilkes は、バンド仲間の Will Graefe を通じて、アヴァンギャルド界の重鎮 Shahzad Ismaily が自分たちの次のライブ(ブルックリン Public Records にて)に飛び入りしたいと希望していることを知ります。Shahzad は伝説的存在ですが、Wilkes は最初あまり気が進みませんでした。なぜならこれは彼にとって、生まれ故郷ニューヨークでの初めてのヘッドライナー公演であり、すでにセットリストは固まっていたからです。普段から即興ゲストを受け入れるタイプでもありません。

一晩考えた末に、Wilkes はこう条件を出しました、「もし Shahzad が、セットの最後に演奏する “Today” のアウトロギターソロで、『The Boys Are Back in Town』の三部ハーモニーのソプラノパートをシンセで担当してくれるなら、参加していい」。驚くべきことではありませんが、Shahzad は大喜びで承諾し、リハーサル日程が決まります。

アルバム『Public Records Performance(Wilkes Recordsより10月17日発売)』のB面ラスト曲を再生すれば、そのフレーズが嵐のように Wilkes 自身の楽曲から立ち現れるのを耳にできます。Wilkes の作品すべてに言えることですが、これは準備と直感が融合した産物でした。ライブ数日前、Wilkes と Graefe がリハーサルしているところに、裸の上半身に片腕で Moog Rogue シンセ、もう片方に持ち帰り用のそば粉パンケーキを抱えた Shahzad が現れます。Graefe が二人を正式に引き合わせ、その場で独特の “空気感” が生まれました。そして Public Records のステージで初めて、その化学反応が観客に披露されたのです。

『Public Records Performance』は、2022年8月6日 の蒸し暑い夜を切り取った作品です。木材パネルで囲まれた会場の “Sound Room” を埋め尽くした観客の熱気が、リハーサルでは得られない生々しいエネルギーを生み出しました。全7曲・27分というコンパクトながらも広がりあるドキュメントで、Wilkes が精力的な活動期の真っ只中にあったことを示しています。この夏の時点で彼はすでに、サックス奏者 Sam Gendel とのデュオ作『The Doober』を録音し、さらに Louis Cole の交響的作品『Nothing』でもベースを担当していました。だからこそ本作には「大々的なお披露目」の重苦しさはなく、むしろ伸びやかさが漂っています。

バンドは緊密かつ対話的なマルチ奏者集団として機能します。Wilkes(フェンダーベース/作曲)、Aidan Lombard(キーボード/ギター、さらに「Stay Awake」で作曲にも参加)、Will Graefe(アコースティック&エレクトリックギター)、Craig Weinrib(ドラム/ギター)。
本作でWilkesは、新曲とアレンジをダイナミックに披露し、拡張し続ける現代的ソングブックへの折衷的なアプローチを提示します。これまで必ずしも作曲力やベースの技巧を前面に出してこなかった彼ですが、本作ではソリストとしても強力なリズムセクションの一員としても、その両方を余すことなく表現。緻密でありながら即興で自在に逸脱できるアンサンブルが特徴です。即興で作られたタイトル曲や、「Stay Awake」で3分2秒に Wilkes と Graefe が完全にシンクロしたフレーズを奏でる瞬間など、随所にハイライトがあります。

テーマ的には、この公演がWilkesにとって「帰郷」であることが随所で示唆されます。「Today」では Thin Lizzy への明確な言及があり、叙情的な「Return Home」はその帰還をさらに強調します。唯一の歌唱曲「Just Married」では、失った恋人が結婚する姿を眺める男の物語が描かれ、Wilkes 自身がかつて思いを寄せ、当日来てくれるかもしれないと期待した “故郷の恋” への郷愁と受容が重ねられています(実際には来ていませんでしたが)。

生まれ故郷の街に戻り、Wilkes はもっとも自然体で、皮肉っぽく、感傷的で、そして少し謎めいた姿を見せています。彼のスタイルに典型的なように、すべては一度きりの出来事――即興的で、少しずれていて、二度と繰り返せない瞬間。その記録が本作『Public Records Performance』なのです。

文:Yousef Hilmy, J. Mamana

関連記事
イベント情報