『The Lost Riots』から20年、Hope Of The States という “痛み” と “希望” の記録

|

『The Lost Riots』から20年、Hope Of The States という “痛み” と “希望” の記録

2004年6月にリリースされた、UKのインディーロック・バンド Hope Of The States のデビューアルバム『The Lost Riots』。あれから20年以上の歳月が経ち、バンドも新たな動きを見せる中、改めてこの作品を振り返ると、その痛切なまでの美しさと、当時としては異例とも言えるスケールの大きさが鮮明に響いてくる。

傷ついた時代から生まれた “怒りと祈り”

Hope Of The States は、2000年代前半に現れたUKインディー/ポストロック・バンドの中でも、最も政治的かつ芸術的な表現を追求した異端だった。バンド名自体がアメリカの不安定な情勢(”希望と分裂” の象徴)を示唆し、アルバム『The Lost Riots』は、イラク戦争と9.11後の混沌、若者の絶望と憤り、そしてその先にある “希望” を詰め込んだ作品だった。

制作中にはバンドのギタリスト、Jim Roadent (ジム・ローデン) が自ら命を絶つという悲劇もあり、このアルバムには「終わりを見据えながら生きる者たちの声」が深く刻み込まれている。

このアルバムの音楽性には、Radiohead や Mogwai といったポストロック勢の影響を感じさせながらも、Hope Of The States はよりエモーショナルで劇的な展開を志向していた。アルバム収録曲、オーケストレーションとディストーションが交差する「The Black Amnesias」、まるで革命前夜のような緊張感を孕んだ「Enemies/Friends」、美しくも破壊的な「George Washington」そして、切迫感の中に微かな光が差すラスト「1776」。一貫して流れているのは、個人の崩壊と社会の不条理を、同じテンションで描ききる誠実さと激情だ。

“失われた暴動” は何を遺したのか

『The Lost Riots』は、リリース当時にUKチャート初登場6位を記録し、メディアからも高評価を受けたが、主流ポップカルチャーからは逸脱した “危うさ” を持っていた。20年経った今、その不安定さこそが、このアルバムを時代を超えた作品たらしめている理由だ。当時の若者が抱えていた閉塞感、社会への無力感、自らの感情の居場所を見つけられなかった孤独。そういった感覚が、今の世代にも鮮やかに突き刺さる。

Hope Of The States は、2006年にたった2枚のアルバムを残して解散したが、『The Lost Riots』は今も静かに息づいている音の記録だ。世界がまた不安定さを増している2020年代において、この作品は、美しさと怒りの両方を携えながら前を向こうとする人たちの伴走者であり続けている。

『The Lost Riots』ストリーミング

関連記事
イベント情報