Aqualung (アクアラング) が新しい才能と創りあげた未来の音楽、そこにあるのはわたしたちの音楽の未来。

豪華ゲスト Joel Compass、Lianne La Havas、Howard and Guy Lawrence (Disclosure)、Luke Sital-Singh、Sweet Billy Pilgrim、Prides、Mikky Ekko、Josef Salvat、SOHN、Kina Grannies を迎えた、5年振り待望のニューアルバム『Ten Futures』を 1/21 遂に日本先行リリース!

Aqualung から届けられた "10の未来 (Ten Futures)" とは一体何なのか?

リアン・ラ・ハヴァス参加の M2 Eggshells (Howard and Guy Lawrence / Disclosure が Co-Produce)、をはじめ、英国、米国、オーストラリア他、今の瞬間を捉えた新しい才能たちが多数参加のまさに音楽の未来が詰まったアルバム。英国人 マット・ヘールズ(= Aqualung)は2009年に L.A. に渡り、リアン・ラ・ハヴァスのプロデュース、ジェイソン・ムラーズとのソング・ライティング他、多くのアーティストとの共同作業を中心とした日々を過ごし、自分自身の作品を創ることからは少し遠ざかっていた。

そんなマットが再び自分のための音楽を創ることを決心したきっかけは、2012年のマーキュリー賞授賞式に彼がプロデュースしたリアンとのパフォーマンスのためロンドンに渡った際、誰かに Disclosure の Latch を聴かされ、その楽曲の完璧さに打ちのめされ、もう自分が音楽を作ることに何の意味もないのではと落ち込んでいたところに、なんとガイとハワードの二人からコラボレーションをしたいという依頼が舞い込んできた

彼らはかつてNMEの記事で自らの音楽に影響を与えたアーティストとしてマットを掲げており、弟のハワードは Aqualung を5本の指に入るほど大好きなソングライターと公言している。『僕はマットの曲をコピーしてピアノを覚えた。だって、僕が曲の中で聴きたい全てが彼の音楽の中には詰まってるんだ』 。そしてここから物語の始まっていった。他者との共同作業で得た経験、そしてそこで出会った新しい音楽の才能たちと音楽の未来を詰め込んだアルバムが完成した。

2005年FUJIROCK’05 の RED MARQUEE に出演、その他2度の来日を果たし日本にもそのサウンド、ソング・ライティング、声に魅了されたファンを多く持つ Aqualung の最高傑作。


マット・ヘールズは本年度最も驚くべきアルバムを完成させた。絶妙に命名された『10 Futures』は、未来を臨む新たな出発としての、アクアラングの歴史からの離脱というよりも、嬉々として境界線を無視し、予想を裏切って、それを何よりも楽しんでいるアーティストが鳴らすサウンドだ。

ロンドン南部を離れカリフォルニアの山へと移り住んだマットの人生は一夜にして様変わり。そのキャリアも一変した。 彼は6枚目のアルバム、2010年発表の『Magnetic North』をもってアクアラングに幕を引いたと宣言。他のアーティストのプロデュースや、曲を書くという計画は、思いもよらぬ成功をもたらし、ジェイソン・ムラーズ、アレックス・クレア、SOHN、バーディー、パロマ・フェイス、リアーナのコラボレーターであるミッキー・エッコ他のアーティストたちが、彼の新しいスタジオのドアを叩いた。そして、『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーンPart1』のサウンドラックに(アクアラング&ルーシー・シュウォーツ名義の)『Cold』が収録され、CMやテレビ番組の曲制作にも携わることになる。

そんなマットに飛躍のきっかけをもたらしたのは、2012年、彼がプロダクションを手掛け大半の曲を共作した、リアン・ラ・ハヴァスのデビュー・アルバム『Is Your Love Big Enough?』だった。全英チャートのトップ5に入り、マーキュリー音楽賞の候補に挙がり、プリンスに賞賛された作品だ。さらに同じ年、ディスクロージャーと名乗る若きダンス・デュオ――彼らは公の場でマットを全時代通じてのフェイバリット・ソングライターに挙げている――から、コラボレーションのリクエストが舞い込んだ。忙しく、また充実した日々を送っていたマットは、コラボレーターたちからのひっきりなしの問い合わせや、マネージャーの懇願にもかかわらず、アクアラングを再開しようという願望は全く抱いていなかった。

「『Magnetic North』はアルバム制作に捧げた10年間の、素晴らしい結末であるように感じたんだ」と彼は話す。「アクアラングの活動を続けるためには、終止符を打つことを躊躇わなかった音楽のスタイルに、時間を遡って帰らなければならなかった。そうすることに意味を見出せないというのが、僕の最初のリアクションだったよ」。しかしながら、アルバムを制作するというアイデアはマットの頭に、本人曰く「厄介な寄生生物みたいに」巣食ってしまった。そして徐々に、明白な解決方法があることに気付く。過去数年間に学んだこと全てを自身の曲に反映させ、世界から自分を切り離して音楽を作るのではなく、コラボレーションを行ない、狭い箱と化したアクアラングの枠から抜け出す勇気を持てばいいのだ、と。

アルバムのトラックリストを一瞥すれば、そこには筋書きがあることが分かるだろう。全10曲のうち7曲にはゲスト・ヴォーカリストをフィーチャーしており、ヴォーカリストをフィーチャーしていないふたつの曲は、共作したものだ。ゲストの顔ぶれそのものも多彩なのだが――リアンやルーク・シタール・シンからグラスゴーのエレクトロ・トリオ=プライド、アートロック・バンドのスウィート・ビリー・ピルグリムまで多岐にわたる――彼らが網羅する音楽のスタイルも然り。ジョエル・コンパスが歌うリード・シングル『Tape 2 Tape』の、グリッチ系R&BとTVドラマのテーマ曲的な狂乱のミクスチュアや、ディストーションとストリングスに彩られたピアノ・バラード『Seventeens』から、オーストラリア人シンガー=ジョゼフ・サルヴァを迎えた、ポール・サイモンとプリンスが出会う活き活きとしたポップ・ソング『Shame On Me』や、合唱音楽の影響下にある『Everything』のアンビエントな美しさに至るまで、『10 Futures』は、再生され、新たなエネルギーを得て、大胆不敵に蘇ったアクアラングのサウンドなのだ。

印象的にアレンジされたストリングスを含めて、大半の音は、“本物”の楽器ではなくマシーンを用いて制作された。ほぼ全曲、サンプルから構築したループに端を発しており、時折風変わりなサウンドを背景に配しているが、いずれにせよどれも、自動車のCMに使われたあの忘れがたいバラード『Strange & Beautiful』で名を馳せた男が鳴らしているとは、まず思わないだろう。それに特定のテーマに則っていないという点も、さして重要ではなかった。『10 Futures』はタイトルが示唆する通りのアルバム――前例の無い冒険的な道を進む10の革新的な曲――なのだから。

「自分自身を全曲に認めることができさえすれば、アルバムを貫く糸は足りているんだ」とマットは言う。「どの曲からも、これまで僕に染みついていたと思っていた姿ではなく、屈折して映った、異なるアーティストとしての自分を聴き取ることができる。それはエキサイティングなことだよ。理論上は行ってはならなかった場所に、足を運んだのさ。今となっては、もっとたくさんやりたくて待ち切れないね」。どの曲もひとつのストーリーを伝えているのだが、それは、昔ながらの恋愛や人生や喪失の物語ではなく、サウンド(往々にしてそれは“見つけた”サウンドだ)に関する物語や、創作の方法に関する物語、そしてコラボレーションのプロセスに関する物語だ。

例えば、『Tape 2 Tape』はカセットテープについての会話にインスパイアされた曲。「人々はアナログ・レコードに執着しているよね。僕はレコード屋で育ったんだけど、青春時代の僕にとって音楽を聴く手段といえば、むしろカセットテープだった」とマット。「カセットテープについて回想しているうちに、僕はカセットテープが立てるサウンドのサンプルをダウンロードし、そこからビートを作ることを思い付いたのさ」。「そのビートからさらにループを作り、一旦保留にしていたんだけど、あとになってまた戻ってきた。これらの曲の多くは、時間を置いて聴き直しては新しい要素を足していった、30秒ほどのサウンドの塊に始まっているんだ。幾つもの絵具の層が重ねられていて、当初は何が描かれていたのか分からなくなってしまった、古い油彩の絵画みたいに」。

「繰り返し割り込んでくるTV番組のテーマ曲の断片は、ランニング中に抱いた妄想なんだ。クレイジーでカラフルな音楽が、曲に侵入しようとする様子を想像したのさ。そして、“ノリ任せ”っていう精神に則って、僕はそういう音楽を作ってサンプリングし、本来はフィットしないはずなんだけど、そこに重ねたんだよ」。『Everything 』の背景に聴こえるノイズは、SOHNことクリストファー・テイラーがパンツを擦っている音だ。「あの曲の出発点は、微細なサウンドについての僕らふたりの会話だった」とマットは説明する。「クリスはパンツを擦りながら、すごく静かにスタジオ内でステップを踏んでいたんだ。ポケットの中に小銭が入っていて、それが、うっすらタンバリンに似た響きをノイズに与えたのさ」。

「ミッキー・エッコと書いた『Heart』は、自分独自のサウンドを作ることに関する議論から始まった曲だよ。僕らはトムトムを車道に持ち出して、鳥のさえずりや、車が行き交う音も少し、一緒にレコーディングした。それが曲のベースになったループで、だからこそユニークなものに仕上がったんだ」。「このアルバムは、ものすごく奇妙なノイズを満載している。スタジオのドアを開けて、そこで起きていることを録音しただけっていうケースも少なくなかったし、多くのサウンドが別のサウンドから作られているんだ。シンガー・ソングライターという殻を脱ぎ捨てようとしているんだったら、ピアノを弾いてばかりいるのは、一番やってはいけないことなんだよ」。


INTERVIEW

――LAに引っ越したのは2009年でしたっけ?

そうだね。

――当初は一時的な滞在のはずでしたよね。こんなに長く暮らすことになった理由は、仕事のため?それともLAという町そのものが気に入ったから?

多分両方なんだと思う。LAでこうして暮らしているなんて、本当に不思議な気分だよ。だって僕らはいつもLAをバカにしていたからね(笑)。住みたい場所のリストの、かなり下のほうにある町だった。そしたら、僕らはパサデナという町と出会った。今では子供たちはアメリカ訛りの英語を話していて、もうロンドンに帰れないんじゃないかって思ったりもする。

――そしてLAでプロデューサーとして成功を収めるわけですが、アーティストからプロデューサーへの変遷もごく自然でしたよね。

そう言えるんだろうね。プロデューサーの世界は競争も激しい。だから自然に起きた部分もあるし、そうじゃない部分もある。僕はほかの人たちのアルバム作りの手伝いをするのが大好きなんだ。アーティスト業に関して一番好きなのは、レコーディング作業だったからね。ただレコーディングをしたいがために曲を書いているんじゃないかって思うこともあったし、僕にとってレコーディングこそは最もマジカルな瞬間だった。結果的には、LAに来てから1年か1年半経ってようやく、自分がどういうプロデューサーになりたいのか、どんなアーティストと組めばいい結果が生まれるのか、見えてきた。そんなわけで今のところは順調だよ。

――そんな風にプロデューサー業を楽しんでいながら、頭のどこかで「自分のアルバムを作りたい」という想いがあったそうですね。

自分のアルバムを作るという考えは、一旦は完全に頭から消えたんだ。2010年に発表した5作目『Magnetic North』がアクアラングの最後のアルバムなんだと宣言することに躊躇いはなかった。キリも良かったしね。10年で5枚のアルバムで、『Magnetic North』のエンディングにあたる表題曲はピアノ・ソングなんだけど、これ以上のピアノ・ソング、これ以上に誠実な曲は、自分には書けないような気がした。

本当にこれで終わったんだ、やるべきことは残っていないんだという手応えがあった。ほかのことをやるべき時が来たと思った。そして、プロデューサー業はアーティスト業とは全く違って、ものすごく刺激的で、楽しくて、ほかのアーティストたちと音楽を作った5年間は本当に実り多き時期だったよ。本当に豊かな体験をさせてもらえた。人生でこんなに忙しかったことはかつてなかったし、こんなに自分の力を試されたこともなかった。だからアーティスト業を恋しがる時間なんか、そもそも無かったんだよ。実際、恋しくはなかった。

プロデューサー兼ソングライターとしてほかのアーティストの作品に関われば、楽しい部分は全部やらせてもらえるんだ。曲を作り、サウンドスケープを構築し、アーティストが鳴らしたいサウンドを一緒に見つけてあげて、そしてレコーディングをする。その後彼らは世界を旅して、退屈な仕事をするわけさ。長い間ツアーをして、インタヴューを受けて何度も度も同じことを説明して、プレッシャーに苦しんで……。僕はそういう話を訊かされたり、ソーシャルメディアで読んで「へえ」って思うだけで、また次のプロジェクトに取り組む。

アーティスト生活に関して僕が惹かれる部分なんて、たいして無かったんだ。ところがこの2年間にだんだん、何かが足りないように感じ始めた。それは要するに、僕自身のごくパーソナルな表現をするための、一種のはけ口なんだと思う。“アーティストであること”そのものには全く未練はなかったから、どうにかして“アーティスト”にならずにアルバムを発表出来れば理想的なんだけどね。ある意味、それゆえにこういうアルバムになったんだよ。僕のクリエイティヴな生活において、完全に僕自身の意図だけを反映させられる場所が欲しくなったのさ。そんなことを考え始めたのが最初の衝動で、それが究極的にはアルバムへとつながったんだよ。でもそれと同時に、自分自身へのチャレンジでもあった。

僕は大きな疑問を突き付けられたんだ。これからもう1枚新たにアルバムを作るのであれば、そこには何らかの意義がなくちゃならない。つまり、“今”と“未来”を意味するアルバムでなくちゃならない。じゃあ、僕は何をすべきなんだろうか?もし今から新人としてスタートを切るのだとしたら、僕は何をするだろうか?これまでに作った全ての作品を捨て去って、これからファースト・アルバムを作るのだとしたら、それはどんなアルバムになるんだろうか?プロデューサーとして得た全体験を反映させるとしたら、それはどんなアルバムになるんだろうか?……そういった疑問は、僕にとってすごくエキサイティングに感じられた。「もし今からやり直せるなら」という仮説がね。

で、一時は本当にゼロからやり直して、名前も変えて、僕じゃないフリをしようかとも思ったよ。アクアラングのアルバムなんだという意識を取り除くことが出来たら、僕はすごく解放されるだろうから。また“アクアラング”と名乗ることに決めたのは、実は、ずいぶん作業が進んでからのことなんだ。

――そもそもアルバムの出発点になったような曲はあるんでしょうか?

うん。『Eggshells』から始まったんだ。自分の曲を作ることを考え始めて、幾つかアイデアを試していたんだけど、何をやるべきなのかなかなか見極められずにいた。今ひとつしっくり来なくて、本当にやるだけの価値があるのか、完全には納得していなかったんだよ。そんな時に、ちょっとばかりマジカルな出来事が起きた。2012年の秋に、マーキュリー賞授賞式でリアン・ラ・ハヴァスとパフォーマンスをするために僕はロンドンに行ったんだけど、色んな人と仕事絡みで会っていて、誰かがディスクロージャーの『Latch』を聴かせてくれたんだ。完全に圧倒されたよ。あまりにも素晴らしい曲で、気分がものすごく昂ぶると同時に、ものすごく落ち込んだ(笑)。

彼らはまだ18歳とかだって訊いて、衝撃を受けて一気に年をとった気がしたし、LAで暮らしているうちに、英国の新しい世代が作る音楽の世界と完全に切り離されてしまったことに気付いたんだ。「僕はいったい何をしているんだろう?」って頭を抱えてしまった。『Latch』は僕に本当に奇妙な影響を及ぼしたよ。すっかり惚れ込んで何度も何度も聴き直して、曲を理解したつもりだったんだけど、自分がこういう音楽、こういうアーティストに関われるチャンスなんか絶対ないんだろうと思った。彼らがいる世界からあまりにも遠く離れた場所に自分がいて、手が届かなくて、何だか情けなかった。こんなにも曲に興奮させられたのは久しぶりだったのにね。で、LAに戻ってきてキム(注:音楽的コラボレーターでもあるマットの妻)や周りの人たちにグチばかり言って(笑)、落ち込む一方だったよ。「僕が音楽を作り続けることに意味があるんだろうか?」とね(笑)。

すると驚くべきことが起きた。確かLAに戻って数日も経たないうちに、出版会社からメールを受け取ったんだ。ディスクロージャーのガイとハワードから「マットと連絡をとってコラボをしたい」と問い合わせがあったとね。「は?」って思った。だってクレイジーな話だろう?夢にも思わなかったまさかの展開で、何か意味があるような気がしたんだ。とにかく、その後僕らは連絡を取り合って、お互いに同じ町に居合わせることがあったら何か一緒にやろうと話をしていたんだけど、最終的には彼らに「取り敢えず4小節分のビートか何か、音を作って送ってくれないか?それを聴いて、どうコラボできるのか様子を見たい」と提案したのさ。

そうしたらこの素敵なビートを送ってくれて、それが『Eggshells』の出発点となり、ひいては『10 Futures』というプロジェクトの出発点になったんだ。「ああ、何となく見えてきたぞ」と感じたからね。その数週間後にリアンとレコーディングをした際に彼女にも歌ってもらったら、いきなり『Eggshells』が完成していた。僕とコネクションがある2組の若いアーティストとコラボして作った、非常に進歩的で未来に目が向いた曲でありながら、僕自身のスタイルを明確に反映していた。「これだ!」と確信したよ。この曲がアルバム全体の青写真になったんだ。

――ガイとハワードとのコラボが生んだ初めて果実だったんですね。

ああ。つい最近またロンドンに行って、リアンとハワードと僕の3人で、リアンの新作のために曲を書いたんだ。だから今では友達になれた気がするし、今後色んな形でコラボすることになるんじゃないかな。

――彼らにとっては、憧れのヒーローとの対面だったわけですけど……。

僕の立場からは何とも言えないんだけど、うん、確かに弟のハワードにとってはそうらしい。学校の音楽の授業で僕の曲を再解釈した作品を提出したとか、ディスクロージャーのライヴで鍵盤系のサウンドチェックをする時に、僕の曲を使っているとか、話を訊く限りでは、かなり熱狂的なファンってことになるんだろうね。本当にビックリしたし、もちろん喜ばしいことだし、実際対面してみてお互い少々不思議な気分だったけど、そういう段階はもう乗り越えて、友人でありコラボレーターとして関係を築けたと思っているよ。

――他のコラボレーターも、何らかの形であなたが音楽作りを共にした人たちなんですか?

そうだね。アルバムに参加してくれた人、関わってくれた人はみんな、僕と何らかのコネクションを持っていた。そして大半はLAやロンドンでコラボしたことがあって、その際に、共感し合えると手応えを得た人たちだね。そんな中で自然に曲が生まれていったんだ。プロデューサーとして仕事をする時、僕はプロダクションだけじゃなくて、たいてい曲作りにも関わっているんだけど、自分のプロジェクトに着手してからは、「じゃあ次は僕のアルバムのために曲を書いていると想像してみて」と提案したりしていたんだ。実は以前から、練習としてそういう試みをしていたんだ。別の人のための曲だと考えることで新しいアイデアが生まれたり、いい効果があるんだよ。

そうやって生まれた曲をアーティストが気に入って自分のアルバムに入れることもあるし、いい練習にはなっても、曲がそのアーティストには合わない場合もある。たまにそれを僕が頂くこともあったし、お互いに気に入って、アーティストと取り合って奪った曲もあるよ(笑)。

――以前あなたは、自分の声やピアノの音を取り去ることでアクアラングのエッセンスを見極めたいと話していたんですが、それをギリギリまで推し進めたということですね。

そういうことなんだろうね。でも同時に、ほかのアーティストの作品をプロデュースしていて気付いたことなんだけど、ソングライターとしての僕にとって、自分が歌わなくていいということは、大きな自由を与えてくれるんだよ。自分で歌うことを前提にして書くと、どうしても僕の声に合わせてしまうし、シンガーによって出来ることと出来ないことがある。僕の声にぴったりの曲もあるし、僕が歌うと笑っちゃうような曲もあるからね。だからといって、後者に該当する曲を書きたくないわけじゃない。つまり今回の僕は、ソングライターとしての自由を失いたくなかったんだ。結果的にナチュラルな曲になろうと、バカげた曲になろうと、シンガーとしての自分に対する僕自身の偏見に左右されることなく、一旦思いついたアイデアは最後まで突き詰めたのさ。それも本作において重要なポイントのひとつだよ。

――作詞のアプローチも変えたんですか?

うん。サウンド作りのアプローチも違うし、言葉へのアプローチも従来とは違う。つまり、新しい手法を試しているんだ。このアルバムを一番シンプルに説明するとしたら、あらゆる面において新しいことを試したかったということ。だから、例えば人間関係や、親であること、未来、世界情勢などなど僕の頭にあった様々な事柄について、自分のパーソナルなフィーリングを表現するにあたって、これまでに使ったことがない言語で表したかった。これまでに使ったことがない構成やテクニックで表したかった。なぜって僕は、今後も長い時間をかけて掘り下げられる、アーティストとしての自分の在り方を見極めたかったんだ。未来を臨んでいるからには、そこに制限はなくて、オープンで、新しいチャレンジと新しい可能性に満ちていて、昔からの習慣や使い古された手法に頼らないことを意味していた。

――サウンド・プロダクションにおいては、多くの曲がサンプルのループに始まっていて、しかもあちこちで採取した意外な音を用いているそうですね。それはプロデューサーとしてよく使っていた手法なんですか?

うん。ほかのアーティストの作品をプロデュースしていて面白かったことがもうひとつあるんだけど、僕の仕事は、アーティストたちがより優れた結果を出せるよう、可能な限り素晴らしいアルバムを作れるよう、最高の曲を書けるよう、積極的に大胆な決断をできるよう、彼らを励まして、促すことでもある。そのために僕は、始終彼らと色んな話をするんだ。だから自分のアルバムを作るにあたって、僕は自分がふたりいると想定したのさ。ひとりはプロデューサーで、ひとりはシンガー・ソングライター。シンガー・ソングライターのほうは長い間活動を休んでいて、そろそろ新しい作品を作りたいと思っているのだとしたら、プロデューサーの僕は彼にどんな言葉をかけるだろうか――とね。

「ピアノに向かって何か哀しげなコードを弾いてみては?」と言うのか?いや、それはしない。まず一番最初に、「ピアノのふたを閉じて毛布で覆って、お茶を置いておくテーブル代わりに使おう」って提案するだろう。だって、シンガー・ソングライターがピアノに触れた途端、ピアノは罠になってしまう。最終的にはどこかにピアノの音を加えるかもしれないけど、「取り敢えずピアノなしでどこまでやれるのか試してみよう」と。僕はいつもそんなことをアーティストに言っているんだよ。彼らにしてみれば、かなりウザいだろうけどね(笑)。

そんなノリで、同じように自分にも語りかけていたんだ。人にいつも言っていることを自分でも実践しないと、偽善者になっちゃうから。実際、そうすることでアーティストを習慣から引き離して、すごくいい結果を得てきた。それに、ソングライターであればどんな状況下でも絶対に曲は書けるんだよ。例えば古い4トラックで適当に舌打ちでもして音を録音していても、自然に、「このパートは曲の始まりになるし、ここはこんな風に発展させられて、こういうコーラスがあってもいいなあ」……とか考え始める。対象が何だろうと、そこにソングライティングのスキルを適用させてしまう。だから、楽器を弾いてコードを鳴らしていなくても、ソングライターであることに変わりはない。

この点については、ほかのアーティストとコラボしながら本当に重要な勉強をさせてもらったし、だからこそ自分でも実践するのが自然に感じられた。あと、僕はサウンドを発見するのが大好きなんだよ。殊に微細なサウンドをね。ものすごく微細なサウンドをものすごくバカでかいものに発展させるのは、本当に楽しい作業なんだ。微細なサウンドが1曲のバックボーンにもなり得るし、僕以外には誰も出所や正体が分からないサウンドが好き。かつて誰も作ったことがないサウンドだからね。すごくインスパイアされるし、僕は字義通りに、自分が今いる場所の産物であるようなアルバムを作りたかった。

このアルバムには僕の自宅にあるスタジオThe Garageそのものが、大いに反映されている。なにしろスタジオ内のあらゆる部分やモノを叩いたり引っかいたりして音を採取したし、ドアを開け放って鳥のさえずりや山の空気や、遠くで聴こえる子供たちの声も録音したし、子供たちにスタジオで飛び跳ねて叫んでもらったりもした。だから、聴く人には元々のネタが何なのか絶対に判別できないだろうけど、アルバムのDNAは、作られた環境そのものから集めて構築されているのさ。僕がこのアルバムを愛している理由はそこにある。サウンドそのものに、作られた場所が刻まれているというところがね。プロダクションってこういうものなんだと思う。こうあるべきなんだよ。

――タイトルについて教えて下さい。早い段階でこういうコンセプトは決まっていたんですか?

ああ、タイトルはかなり早く決まったよ。3つくらい“future”が仕上がった時点だったかな、その時にタイトルは『Ten Futures』にすべきだと悟った。最初から10曲というリミットを定めるのは、いいアイデアなんじゃないかと思ったんだ。それに、曲作りをしながら“future”という言葉が心に繰り返し浮かんだから、ああ、これは未来に関するアルバムなんだなと気付いた。僕にとって、未来に向けて進化させられる、音楽的・サウンド的なヴォキャブラリーを探究するアルバムなんだよ。あらゆる面において無制限で、どこまでも進化し続ける可能性を秘めたヴォキャブラリーを。と同時に曲のひとつひとつが、独立した小さなパラレル・ワールドみたいなものなんだ。それが世界に放たれて、何らかの形で、聴き手の人生を変えるかもしれないし、未来を変えるかもしれないし、或いは未来を形成するのかもしれない。だから適切なタイトルだと思えたのさ。それに、シャワーを浴びている時に閃いたんだよね。シャワーを浴びている時に閃いたことって、信頼しても大丈夫だと僕は思っているんだ(笑)。

――日本にはしばらく来ていませんが、こっちのファンにメッセージをお願いします。

ビックリしないでね。これも僕なんだから(笑)。これまでのアルバムと同等に、僕が自分を表現したアルバムなんだ。単に少し大人になって、変化を遂げただけで、きっとみんなもそうだよね。それに、これって誰もが言いそうなことだけど、アクアラングを休止してツアーをしなくなってから唯一、行けなくなって残念な場所は日本なんだ。だからツアー禁止令を解かなきゃならなくなるかも。日本にはぜひまた行って、このアルバムをみんなと分かち合いたいと思っているから。なぜだか分からないけど、このアルバムは日本のみんなには理解してもらえそうな気がしているんだ。

Special thanks to Hiroko Shintani


Aqualung - Ten Futures


01. Tape2Tape (ft Joel Compass)
02. Eggshells (ft Lianne La Havas) Co-produced by Howard and Guy Lawrence
03. Be Beautiful (ft Luke Sital-Singh)
04. Seventeens
05. New Low
06. Clean (ft Sweet Billy Pilgrim)
07. Hearts (SpinWheelOscillate) (ft Prides)
08. Shame on me (ft Josef Salvat)
09. Everything
10. To the Wonder
Japan Extra Track 2曲収録
11. Use Me
12. All She Wore She Was

Amazon iTunes


Ten Futures 参加アーティスト

M1 : Joel Compass 英国のR&B soul singer。2013年にデビュー。2014 年のシングル“forgive me” がUKシングル・チャートで34位を記録。そのデビュー以降、立て続けにUKのチャートを賑わし続けている 

M2 : Lianne La Havas (リアン・ラ・ハヴァス):ロンドン生まれのフォーク、ソウル・シンガー。BBC Sound of 2012 に選出され、Aqualung がプロデュースしたデビュー・アルバム "Is Your Love is Big Enough" は iTunes Album of the year 2012、2012 Mercury Prizeにもノミネートされた

M2 : Howard and Guy Lawrence /Disclosure co-produced 今や世界的な人気を博す英国屈指のエレクトロニック兄弟。(Guy Lawrence ’91年5月25日生) (Howard Lawrence ’94年5月11日生) 2013年リリースのデビュー・アルバム "Settle" はUKアルバム・チャートNo.1を獲得。2014年のグラミー賞 Best Dance/ Electronica Album にノミネートされた。

M3 : Luke Sital-Singh (ルーク・シタール・シン) 英国のシンガーソングライター。2012年ガーディアン紙選出の 'New band of the day'で脚光を浴びた。「退屈な人生に息吹を与える」と評される。

M6 : Sweet Billy Pilgrim 英国のエクスペリメンタル・アート・ロックバンド。 バンド名はカート・ヴォネガットのスローターハウス5より。アルバム "Twice Born Men" は‘09年 Mercury Prize/Album of The Year に選出 

M7 : Pride 2013年に結成されたスコットランド、グラスゴー出身のシンセ・ポップバンド 

M7 : Mikky Ekko (ミッキー・エッコ) 今をときめくアメリカ、ルイジアナ州出身のシンガー・ソングライター、 プロデューサー。リアーナのシングル『ステイ』で知られる。 アルバム7曲目に収録されているHearts (SpinWheelOscillate は Aqualung との共作)

M8 : Josef Salvat オーストラリア出身のシンガーソングライター。2013年ガーディアン紙のNew Band of The Dayに選ばれ、次のGotyeとの呼び声も高い

M9 : SOHN (ソン) 英国出身,現在ウィーン在住。4ADよりリリース。日本での人気も高く来日も果たしている

M10 : Kina Grannies (キナ・グラニス) LA在住シンガーソングライター。日本人と米国人のハーフ、彼女のセカンド・アルバム "ELEMENTS" は Aqualung がプロデュース

Album Cover : Studio Moross 今作 "Ten Futures" のアルバム・カバーは『Studio Moross』によるもの。Kate Moross を中心に今、ロンドンで一番最先端を行くデザイン集団『Studio Moross』ディスクロージャー、BANKS、サム・スミス、ジェシー・ウェア、Simian Mobile Disco 他、多くの人気アーティストのアルバム、映像、マーチャンダイズに至るまで幅広い活動で注目を集めている


PRESS

"ソウルとエレクトロニカが見事に一つに溶け合った!" - NYLON

"ブルー・アイド・ソウルと風変わりな時代が出会いマット・へールズが還ってきた。とても奇妙で、そしてとても素晴らしい" - Sunday Times Culture

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