interview :
4年振りのニューアルバム『Salt』をリリースした、NYのエクスペリメンタル・ポップグループ Mr Twin Sister インタビュー

Photo by Karen Sofia Colon

NYロングアイランドのエクスペリメンタル・ポップグループ Mr Twin Sister (ミスター・ツイン・シスター) が4年振りのサードアルバム『Salt』をリリース!本作は現在の音楽シーンの流れともリンクする、ジャズやファンク、エレクトロにドリームポップなど多様なジャンルが絶妙にブレンドされ、さらにサウンド進化させ前進させたハイブリッドなポップ・サウンドの結晶となっている。

indienative では日本盤リリースのタイミングで、バンドの中心人物で紅一点 Andrea Estella にメールインタビューを行った。絶賛ツアー中の忙しい中、丁寧にインタビューに答えてくれました。

新しいアルバムは2ndアルバム『Mr. Twin Sister』よりもR&B、ソウルやジャズなどの色がより濃くなっているように思えます。以前の作品と比べてどんな変化があったか教えていただけますか?

より空間性を意識し、乱雑なものを録音から取り除こうとしたの。

アルバムを作っている中で最もエキサイティングだったことは何ですか?

こういった曲の製作を押し進めていけることと、最終的にそれをリスナーにシェアできることの自由。『Salt』のビジュアルに取り組むのもすごく楽しかったわ。

このアルバムを作っている間、インスパイアされたものや人があれば教えていただけますか?

この内の何曲かは他の曲より古い曲なの。周囲のあらゆるものにインスパイアされた。歌詞的には人生や自己肯定感の問題、宗教、プライバシーの問題、政府、文化的多様性、LGBTQ、自尊心、自己イメージ、身体改造、夢、非行、死、映画、悪習などから引っ張ってきたテーマもあるわ。

アルバム名を『Salt』にした理由、テーマを教えて下さい

このアルバム名はそれぞれにとって異なる意味を持っているの。これはマリオネットの名前で、何となく悲しい表情をしているけれども、操られて別の表情に変わることもある。どんなに『Salt』が幸せそうに見えても、彼の表情には悲しみの色合いが混ざっているの。ダイエットでミネラルを補填して摂るのと同じように、ちょうど今私は自分の(Estellaの)世界の均衡を保とうとしている。私の体内の塩分濃度が低い時、不安や悲しみ、パニックを引き起こす。塩分濃度が高すぎる時や今はそれを調節することができるようになっているので生活をより快適に送ることができているの。これがこのアルバムを書いている時にどんな感情だったかと、アルバムタイトルと人形の名前を『Salt』にした理由よ。テーマは「人生を意義のあるものにすること」

このアルバムの中で、以前も参加していた Pablo Eluchans、Ava Luna の Carlos Hemandez が参加していますね。彼らと一緒にアルバムを作るのはどうでしたか?

彼らのような友人達と一緒に演奏をしたりレコーディングをするのはいつも素晴らしいわ。彼らは驚くべき才能を持っていて、私たちの技術が無いためにできないことも彼らならできる。そういった時には彼らの演奏が私たちの演奏レベルに合うように簡単にしてもらえるように頼まなければならない。何と言っても、ここ数年彼らと一緒に曲を書くことができていることにとても感謝しているわ。

このアルバムのカバーになっている人形はアンドレアが作ったのですか?

ええ、私が作った。彼の名前は Salt で、私が初めて完成させたマリオネットなの。

どうやってこの人形を作ったのですか? 彼の表情は何を意味していますか?彼のことをどう思いますか?彼(彼女)をカバーガール(カバーボーイ)に選んだ理由は何ですか?

純水パール、ビーズ、布、木、のり、針金、糸、純宝石と粘土で作ったのよ。作り方の本も持ってるし、YouTubeにも載ってるわ。大部分が張子で出来ている人形も作っていたことがあるの。NYのヤードセール(ガレージセール)で破格のパールを見つけられてラッキーだったわ。ビーズイヤリングの編み方もちょうど学んだところで、最初に必要だった数よりも多くのビーズが必要になって、自分の身につけた新しいスキルでマリオネットを作る方を選んだの。夏の間中はどこにも出かけなかった。録音と彼を作ることにずっと取り組んでいたから。カバー写真の中で彼は少し悩ましそうで、不快で、悲しそうに見える。それは様々な事情に共鳴する私たちのようでもある。Salt をカバーボーイに選んだのは、魅力的にかつ面白くグループとしての MTS を代表してくれると思ったから。彼をコントロールし、このような形で写真に写すためにみんなで一丸となった。この人形を完成させたことを嬉しく思う。Salt は完璧ではないけれど、人形を作る技術を向上させられたことで気分が良いわ。マリオネットとこのアルバムを完成させられて素晴らしく良い気分よ。

なぜ「Deseo」をスペイン語で歌ったのですか?

Deseo をスペイン語で書いたのは私がエルサルバドル人でありプエルトリコ人でもあるから。友人や家族が何年もスペイン語の曲を私に作るように言ってたの。私のスペイン語はもっと練習が必要だと思っていたけれど、やっと準備が整ったと感じた。誰も押し付けてこなくなったので、スペイン語で曲を書くことにした。もっとスペイン語の曲を書きたいと思うわ。

音楽以外のアーティスト活動をどのように位置付けていますか?

音楽の前に視覚的なアートが思い浮かぶんだと思う。子供の頃は両方のファンだったわ。大人になって音楽を先に作っているとは夢にも思わなかったし、わからなかった。視覚的な作品を作るのにプレッシャーがないから、この方法で大体あってるんだと思うの。音楽によってより多くの人に自分の作っている作品をシェアするきっかけにもなっていると思う。両方大好きで、それぞれを創作する中で互いに役立っているの。

MTS の音楽はアンドレアが個人のWebサイトで自己紹介しているように、「学際的(多分野の領域にまたがっている)」と言えると思います。普段どうやって曲を書いていますか?

全て曲はデモから作り始めるの。時々、1人が曲の全体を書き上げて、残りのみんなで覚えるということもあるし、アイディアを未完成のままにして1人かそれ以上でそこから完成させることもあるわ。

このアルバム『Salt』にも言えることだと思うのですが、Mr Twin Sister の音楽、MV、アートワークやファッションの中でアンドレアの世界観が一貫して表現されているように思われます。アンドレア、あなたがインスパイアされた音楽、文化やファッションを教えていただけますか?

ビジュアルを持って演奏しかつ歌詞を書く唯一の存在だから、グループには私の視点が反映されていると思う。いつも私が表現したいことにみんなが乗り気かどうか確かめているのよ。私個人の生活からアイディアを引き出そうとするけど、周囲の人の希望の方向性にいくらか変えることもあるわ。それで私は自分の空想を現実の生活に服やメイク、曲やビデオと一緒に持ち込もうとしているの。それらは全て繋がっていて、想像物を現実にもたらすし、その逆も成立する。デザイナーの中では Palomo Spain、Magdalena Woodman、Daniela Gina Geraci が好き。

Sateen の友人は最近私を Vaquera NYC に招待してくれて、みんな綺麗だと思った。(インスパイアされた音楽や文化は) Benny Revival、Sateen、Smashing Pumpkins、arch angels、Bob Baker Marionette theater、Little Nemo in Slumberland、Björk、David Bowie。Salt は Bowie が履いていた靴から私が再現した小さな靴を履いている。

映画も好き!どんな映画でも見るのが好き。粗悪なものでさえも。アクション映画はあまり好きではない。もしもっと古い映画でも良いなら、Heddy Lamar が出ているものなら本当に何でも好き。Heddy が WiFi を発明したというのはとってもクレイジーだと思う。前のUSツアーでは衣装を川島雄三監督の『しとやかな獣』にインスパイアされたわ。映画に出てくる兄のような服を着たこともあったし、妹の着ていたような服を着たこともあったわ。K・アジフ監督の『偉大なるムガル帝国』もまた考えることをやめられない映画。ビジュアル的にも魅力的で、音楽が好き。

2014年の前作『Mr Twin Sister』のインタビューでは、80年代から90年代の日本のアニメのオープニングテーマとエンディングテーマが好きだと話していました(その時は『マーマレード・ボーイ』をお気に入りに挙げていました)。最近ハマっている/注目しているアニメや音楽はありますか?

日本のアニメということになると、昔のアニメに未だに惚れ込んでいる。アーティストの内山ユニコと友達になって、彼のキャラクターである「顔ちゃん」は素敵だと思う。アメリカでもたくさんの人が本当に彼女のファンになっているのを知ってる。最近はそんなにアニメは見ないかな。もっと最近のものでおすすめがあれば大歓迎。私は90年代にとらわれているけど、いくらかまだ見ていない素晴らしいものがそれ以外にもきっとあると思う。『進撃の巨人』を見て話は恐ろしかったけど、手描きのセルアニメの方がやっぱり好き。高畑勲が亡くなったと聞いてとても悲しい。彼のアニメが本当に大好きだった。

『Mr. Twin Sister』から新作『Salt』までの間は何をしていましたか?

曲を書くことやレコーディングする作業をペースダウンさせるような、多くの個人的な難しい問題に対処していたわ。長い間ただ座っているだけでは曲を完成させられないということを思い知った期間だった。現実を見て、グループを再編成しなければならなかったけれども、古い曲を何曲か思いのままにするだけだった今までよりも、今の私たちは幸せよ。

今のNYの音楽シーンをどのように思いますか?

生のものと正直なものにまさに移り変わろうとしている気がする。まあ私もそれをとにかく望んでいるわ。まさに今、人々にとって曲にするにはひどい出来事が多く起きている。たくさんの痛みや不正義があり、多くの人の目に触れることで状況を変える必要がある。すでにアーティストの中にはパートナーと別れたとかなんて恋愛は嫌なものなのかとか以上のことを表現している人もいる。そういうテーマにはちょっと飽きてきたし少しの間落ち着くと思う。

次のプランを教えて下さい

今行なっているこのUSツアーを終えること。あのひどい山火事があったカリフォルニアを通って南の方にドライブしてきて今はウエストコーストでバンの中にいる。火事が起きるちょうど前はバーで襲撃もあった。襲撃が起きた同じ夜にバーで演奏をしていたから、このようなことが自分にも起こりうるのかと思うととても悲しくなった。最近のアメリカでは襲撃事件は普通すぎるものになっている。これが終わったらホリデーで家に帰ってMVの編集をするつもり。それで日雇いの仕事を辞めて次のアルバムに向けて動き出したい。次の数年間は自分に暇な時間ができないようにしたい。完成させ、シェアしたいプロジェクトがたくさんある。私たちが作ったものをみんなにシェアさせてくれてありがとう。🙇🏻‍♂️🙇🏻‍♂️🙇🏼‍♂️🙇🏽‍♂️

インタビュー/翻訳 : Lisa Tominaga & indienative