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Lightning Bolt、最新アルバム『Sonic Citadel』インタビュー

Photo by Scott Alario

(ライトニング・ボルト) が前作『Fantasy Empire』(2015年発売) 以来4年半ぶり通算7作目となるスタジオアルバム『Sonic Citadel』をリリースした。本作は Lightning Bolt 結成25周年を記念すべく作品としてドロップされ、Lightning Bolt 史上かつてない程にポップな要素が際立ったアルバムとしてファンの間でもリードシングルが公開されるとたちまち話題となっていた。

今回インタビューに答えてくれたドラム&ボーカルの Brian Chippendale (ブライアン・チッペンデイル) によると、過去の作品でもポップな要素は既に存在しており、今作ではブラインが普段聴いているメインストリームのポップ音楽に、絶大な影響を受けたヴァン・ヘイレンやメルツバウの要素が混ざっているというあたりなど、Lightning Bolt らしい回答を得らた。インタビューでは結成から25年の時を経ての変化について、本作『Sonic Citadel』のポイントや聴き所についても快よく説明してくれた。是非アルバムと共に楽しんで頂きたい。

ーーまずアルバム『Sonic Citadel』リリースおめでとうございます!まずこの4年半を振り返ってどのような道のりでしたか?

ブライアン・チッペンデイルです。僕の場合、このアルバムと『Fantasy Empire』の間に様々なことがありました。3年前に第一子が生まれたので、ローラーコースターのような毎日でした。3年間は睡眠不足でありながら、マジックのような日々でした。まさに『Fantasy Empire』のような世界観に突入しました。ブライアン・ギブソンは2016年に『Thumper』というゲームを発表し、数々の賞も受賞し、大成功を収めました。なので、二人ともライトニング・ボルト以外の活動で忙しくしていました。

ーー本作『巨大な音の城塞=Sonic Citadel』のコンセプトのようなものはありますか?



コンセプトはとにかくアルバムをリリースすることでした。活動25周年目を迎えたので、それを祝うために作品をリリースしたかったわけです。レコーディング・プロセスに入って、いくつかのサウンド・アプローチの面でのコンセプトが見えてきました。例えば、ギブソンはシンプルなベース・プレイに専念して、エフェクトをあまり使わずに、よりストレートな演奏を心がけました。僕はよりクリアで、直球のパワフルなヴォーカルを心がけて、ヴォーカルの方向性を変えました。でも、僕らはコンセプトを先に決めると大抵は失敗するので、あまり決めないようにしています。

ーー前作『Fantasy Empire』では BOREDOMS や からインスピレーションを受けたことを語っていますが、今作で影響を受けたもの、インスピレーションを受けたアーティストや作品はありますか?


『Fantasy Empire』で彼らに影響されたかは分からないけど、バンドを始めた頃の90年代はメルツバウやボアダムスにインスパイアされたのは確かです。ボアダムスは長年活動している中で成長しながら変化し、ずっとインスピレーションを彼らから受けています。ライトニング・ボルトは初期から、日本の音楽から多大な影響を受けています。

でも、音楽制作をしている時は他の音楽はあまり聴かずに、自分たちから湧上がってきたものを素直に表現しているだけです。例えば、「Van Halen 2049」はもともと「Blade Runner 2089」という仮タイトルで進めていたんですが、「ブレードランナー」のミニマルでヘヴィなサントラにインスパイアされていました。

でも結局出来上がった曲はミニマルでもヘヴィでもなく、ヴァン・ヘイレンの「Eruption」に似た曲になってしまいました。全ては結局ヴァン・ヘイレンの「Eruption」に回帰するわけです。影響というのはそういうもので、あるバンドにインスパイアされて曲を作ったとしても、最終的に全く別のものになってしまうんです。僕らが最も影響を受けているのは、僕らが使っている楽器と、深層心理に刻み込まれた音楽です。

だから、子供の頃に聴いたヴァン・ヘイレンなどの影響が大きいんだと思います。「Air Conditioning」には、AC/DCっぽいギター・ブレイクが入っています。だから、80年代のヘア・メタルの影響が大きいわけです。僕はリアーナやアイコナ・ポップのようなポップ・ミュージックも結構聴きますが、そういう要素はあまりライトニング・ボルトには入っていません。僕らはポップ・ミュージックのテクニックではなく、エモーショナルなインパクトだけを取り入れているからです。

ーーかつてない程にポップな要素 (それこそ一緒に歌えるような) や、キャッチーな楽曲が際立ちます。バンドとして何か変化はありましたか?


ポップ的要素は過去の「13 Monsters」や「Dracula Mountain」を聴くと分かりますが、実は昔から僕らの音楽に入っているんです。今作では、曲のスピードを少し落として、よりクリアにレコーディングしているので、ポップスの要素が顕著になったんだと思います。『Sonic Citadel』では、曲の構成においてメロディが重要な要素でした。そして、僕のヴォーカル・センスは典型的なポップス寄りなんです。僕が聴いているリアーナやアイコナ・ポップ、シアの影響が今回は出てきているのかもしれません!そこにヴァン・ヘイレンとメルツバウがもちろん混ざっていますけどね。

ーー収録曲「Air Conditioning」が公開されると、コアなファンの中には「ポップミュージックを期待していなかった …」という声や「Lightning Bolt なのに聴きやすい!」「ボーカルが良く聞こえるようになった!」など、良い意味で期待を裏切った歓喜の声が届いています。リスナーを意識したり、そういった声に対してどう思いますか?


何曲かの反応については、僕らはちょっと心配していました。その曲にヴォーカルが入っていたのと、直球なサウンドだったからです。「Air Conditioning」はもうちょっと聴きやすいですが、僕らのトレードマークとなる曲の要素がすべて入っています。ギブソンがベースラインを徐々に盛り上げていく感じが、王道のライトニング・ボルトです。

あの曲について不安はなかったですが、「Hüsker Dön’t」と「All Insane」はちょっと心配でした。すごく心配していたわけじゃないけど、批判が来るんじゃないかと思って、心の準備をしていました。でもほとんどの人はあの曲を気に入ってくれています。「“All Insane”は最悪」というコメント一つにつき、「“All Insane”最高」のコメントがあります。

25年間活動して、僕らが新しいことに挑戦することを許してくれない人がいるんだったら、それは彼らの問題です。「All Insane」のベースラインはヘヴィだし、ヴォーカルは気に入っているので、アルバムに入れることに賛成でした。ああいう曲は昔から作っているけど、唯一の違いは、25年経過して少し僕らも気を許して、今まで見せなかった部分を見せるようになったことです。

ーー収録曲「Hüsker Dön’t」が公開されるとファンはタイトルに笑っていましたが、このタイトルになったエピソードがあれば教えて下さい。


僕は子供の頃からハスカー・ドゥの大ファンでした。僕の初期の演奏は彼らにすごく影響を受けました。彼らの容赦ない演奏スタイルと、キャッチーな曲、そして彼らの音楽のエモーションに惹きつけられました。『Zen Arcade』や『New Day Rising』といったアルバムを聴いて育ちました。SSTの初期のレコードが大好きでした。

ギブソンは最近になってハスカー・ドゥを聴くようになりましたが、彼もハマっています。数年前だったら、彼は「Hüsker Dön’t」のような曲は演奏しなかったと思います。彼はこの曲を演奏できるようになるまでに、自分のタイミングで到達しないといけなかったし、彼はハスカー・ドゥを聴くようになって、シンプルであることの大切さを学んだと思います。

“Dü”を“Dön’t”に変えるギャグは、ベタだけど、「ライトニング・ボルトだったら、ハスカー・ドゥみたいな曲を作っちゃダメだろ?」っていう意味がタイトルに込められています。彼らはユニークなバンドだから、この曲は似てないんですけどね。

ーーアルバム全体を通してメロディアスな楽曲だったり、これぞ Lightning Bolt なカオスな曲があったりと見事なバランスを保っています。アルバム製作で何か考慮したことはありますか?また「Lightning Bolt の音楽は体験そのものだ」という声もありますが、自身では Lightning Bolt のサウンドをどのように定義、または体現していますでしょうか?


僕らはアルバムのランスはいつも意識しています。僕らはリスナーを音で完全に圧倒したり、息ができない感覚にさせたくないと思っています。必ず、アルバムの中で休憩できるポイントを入れて、ライヴの構成を意識して作品を作っています。激しい演奏をぶっ続けでオーディエンスに聴かせたら、どこのポイントで彼らは息抜きをしたくなるのか? 

インストの演奏だけを聴かせて、どこのポイントで人間の声を入れて、彼らが音に共感できるようにするべきか? 僕らは激しい演奏を得意としているバンドですが、僕らは人間だし、人間らしさを前面に出したいとは思っています。それはライヴでも作品でも同じです。マシンのようなサウンドにはしたくありません。

ーーアルバム・リリースの合間の4年半は個々の活動などで非常に忙しくしていたようですが、お互いどのようにしてアルバム製作を進めたのでしょうか?使用していたツールなどについても教えて下さい



アルバムのレコーディングはフル・スタジオで ProTools を使って行いました。2週間のセッションを3回、数週間の休憩を間に入れてブッキングしました。休憩している間に、レコーディングした素材を聴き直して、スタジオに戻った時に調整できるようにしました。僕のカセット4トラック・レコーダーを持ち込んで、ドラムやヴォーカルにディストーションをかけるために使いました。

レコーディング・プロセスは特に問題はありませんでした。通常は、ツアーの直後にスタジオに入るので、演奏はタイトでワイルドになります。でもツアーの直後は疲れていて、イライラしています。今回はその正反対で、ツアーの直後じゃなかったので、演奏は100%でも150%のタイトさではなかったけど、もっとリラックスした状態で、精神的に落ち着いてレコーディングできました。でも、息子の面倒でかなり時間が取られて、睡眠が取れなかったので結局は大変でした。

ーーバンドのヴィジュアル・アートを担当するブライアン・チッペンデイルさんは、グラフィックノベル 『Puke Force』を発表するなどファッション・ブランドとのコラボも行っています。こういったクリエイティブな仕事がバンドのアイディアに反映されることはありますか?


クリエイティヴィティは川の流れのようなもので、使い続けないと、流れが滞ります。流れを止めてしまうと、アイデアがなかなか降りてこなくなります。クリエイティヴなライフスタイルを送る上で、音楽やアートをやり続けることで、創作活動がしやすくなります。他の人と作業したり、ライトニング・ボルト以外のクリエイティヴなプロジェクトに参加するのは大好きです。そうすることで、ライトニング・ボルトのいいところを思い出したり、バンドの改善点が見えてきて、バンドを最善の状態に保つにはどうすればいいかがわかってきます。

ーー最後にアルバム『Sonic Citadel』のここだけは押さえておいてほしいなど、聴きどころ、ポイントなどがあれば教えて下さい。

曲の世界観に入り込んで、歌詞も読んでくれたら嬉しいです。「Hüsker Dön’t」は自分が死んでから、幼い息子に当てた手紙のような曲。ライトニング・ボルトにおいて、歌詞は第四の要素、つまり一番重要性が低い要素なわけです。ベースとドラムが最も重要で、楽器としてのヴォーカルが第三の要素、そして歌詞が最後。歌詞を自分でも聴き返しましたが、感動できるポイントや、笑えるところもあると思います。

それ以外で言えば、自分のお気に入りのポイントは特にないです。好きなポイントはいつも変化しています。「All Insane」を爆音でヘッドホンで聴きながら踊るのも結構楽しいですよ。真夜中に。キッチンでお皿を洗いながら聴くのもオススメ。スーパー家事ライトニング・ボルトという感じかな。ありがとう!

ー ブライアン・チッペンデイル