来年3月に待望の来日公演も決定したUKのロックバンド FOALS、今年2枚目となるニューアルバム『Everything Not Saved Will Be Lost Part 2』を 10/18 (日本盤CDは 10/23 発売) リリース!本作について FOALS のフロントマン、ヤニス・フィリッパケス (Vo/G) に行ったオフィシャル・インタビューを公開!
ーーまずは日本では8月にサマーソニックでライヴを披露してくれましたが、その時のライヴの印象はいかがなものだったでしょうか?
ライブの出来としてもいいものが出来た満足感があったし、何よりも嬉しかったのは、最後の来日公演から結構時間が経っていたにもかかわらず日本のファンがずっと待っててくれていたり覚えていてくれたりしたこと。その熱をライブで感じて、自分の中でもすごく盛り上がったよ。ファンミーティングも楽しかった。
Photo by Mitch Ikeda
ーー<パート1>からのリリースから約半年が経過しました。あらためて<パート1>を振り返ってみていかがでしょう?またファンの反応はあなたたちが期待するようなものだったでしょうか?
ずっとツアーしているので、正直言ってじっくりと振り返る余裕がないまま、<Part2>のリリースの準備にとりかかっていった感じなんだ。でも、ファンのレスポンスは想像以上、期待以上のものだった。みんな、2つのリリースの意図を気持ちよく理解してくれている気がする。
ーー2連作のタイトルに冠された『Everything Not Saved Will Be Lost』の意味は?
このフレーズは、あるときピンと来てノートに残しておいたんだ。そのときは気づかなかったけど、考えれば考えるほどこのフレーズは色々な意味を含ませられるんじゃないかと。表層的にはテクニカルな表現だけど、―例えばPCゲームの注意書きでよくあるよね―今切羽詰まった問題としての環境問題や社会問題は、今アクションを起こさないと元に戻れない、というメッセージにもなるし、同時に何も永遠ではない、人生の試練も永遠に続くわけではない、というメッセージも伝えられると思ったんだ。
ーー聴き手にとっては非常にイマジネイティヴな作品になったと思います。<パート1>を聴いて、あれこれと思いを巡らし、<パート2>の展開を想像するというように。それはあなたたちの狙いだったのでしょうか?
そう言ってもらえるのが一番うれしいね。もちろん、その意図でリリースした。画面のハーフスクリーンを見せられて、やっとpart 2でフルスクリーンを観るような感じかな。
ーーそもそもこの2作の壮大なテーマはどこから生まれてきたものなのでしょうか?直接的、直接的ではないにしろ、あなたたちにの音楽に影響を与えている映画や本、アートはあるのでしょうか?
具体的に、すぐに出てくる作品っていうのはないけど、映画も本もアートもかなりの量をインプットをしているので、自ずと何らかの形でアウトプットに影響しているんじゃないかな。また、この作品に関しては、今の時代の空気、特に乗り越えなくてはならないこの時代特有のチャレンジ―環境問題、社会問題などーに対しての意識が大きかった。
ーー<パート1>と<パート2>は同時期に録音され、2枚に振り分けられたと聞きました。サブスクリプションサービスが普及した現在では収録分数や曲数に縛られることはありません。それでもあえて2枚に分けて、なおかつリリースの時期をずらしたのはどうしてでしょうか?
確かにサブスクリプションだったらあまり縛られないんだけど、制作しているときは、サブスクリプションを念頭に作ってはおらず、とにかく溢れるアイディアをどんどん形にしていったら、どうしても残したい曲が20曲仕上がっていて。不思議と各々の曲がひとつのアルバムの中での立ち位置があるような気がして。。例えば、この曲はどうしてもアルバムの〆の曲にしたい、と思う曲が2曲あったりね。
同じアルバムで存在させたい曲、させたくない曲など考えていったら、2枚出すのが自然だったんだ。リリースをずらすことによって、聞く人が量に圧倒されずに楽しんでほしかった。テレビドラマの Season 2 を待つようにね。また、ツアーする中で、ライブにおいても<Part 1>と<Part 2>があるのは新しい発想だったし、それもあって時期をずらしたんだ。今回はそういう理由だけど、今のサブスクリプション時代は、同時に多くの楽曲をどんどん出せるし、アートワークなどのクリエイティブを発表できる場が増えてアーティストにとってもいい時代になったと感じているよ。
ーーこれは<パート1>用の曲、これは<パート2>用と録音前に明確な線引きがあったのでしょうか?また<パート1>用の曲を一気に録音してから、<パート2>に取り掛かったのか。それともバラバラに録っていって、できたものを<パート1>と<パート2>に振り分けていったのでしょうか?
後者だね、楽曲がある程度あがってから2枚にしようと思ったし、楽曲が主張してくるゆえに家を分けた感じだ。出来上がってみたら同じ DNA を持つ楽曲同士を合わせるのが自然に感じて。音楽的にいえばよりダンスなものと、よりロック色がつよいものと。前のアルバム制作の時は、アイディアベースで終わっていたもの、あるところまで進めたけど終わりを見なかった曲が沢山あったけど、今回は意図的に<いいアイディア、いいベースができたらフィニッシュラインまで持っていってみよう>というのがあったんだ。でも単に多くの曲を仕上げたいという気持ちからではなく、とことん向き合う作業をやってみたかった。結果、本当に残したいと思える20曲に出会ったよ。
ーー<パート1>と<パート2>の曲は互いに性格上の違いがあるように思います。絶望と希望というように。そうした違いは録音している時のあなたたちの気分にも作用したように思いますがいかがでしょう?
そうだね、録音している時というよりは制作途中ではそのときの気持ちに大きく影響があったかも。また、その逆もね。その気分だから、その楽曲ができるものだし。同時に、両アルバム通して一つのテーマが入り組んでいて、ぱっきりと分けたつもりではないんだ。意図的に<Part 1>はこんなサウンドで、<Part 2>はこんな感じで。。。というような作り方をしていないのでまずは楽曲を思うままに仕上げていった。そこから同じ DNA をもつ曲をまとめていったんだ。
ーー<パート1>、<パート2>ともに砂漠が出てきます。荒涼とした光景は聴き手にわかりやすいヴィジョンを与えるのと同時に、いくつかのメタファーにもなりうると思ったのですがいかがでしょう?
この曲はジミーが書いたんだけど、意図としては映画のオープニングのような存在にしたかった。荒野の砂漠、というイメージがアルバムの導入にはぴったりだったんだ。特に<Part 2>のオープニング曲は、前のアルバムの終わりが<炎>だったので、その炎が燃え尽きた後の荒涼としたイメージを最初に持ってきたかった。砂漠というのはすっと映像的なイメージが湧きやすいし、そのイメージが我々のテーマに沿っていた。
ーー2連作を舞台に繰り広げられた壮大なストーリーテリングの中でパート1が起承転結の「起」「承」。<パート2>は言わば「転」と「結」に該当するクライマックスの一枚だと思います。前作(パート1)のラスト・ナンバーだった “I’m Done with the World” は世界の終わりを告げるバッドエンドだったわけですが、<パート2>で描きたかったものは?(そこから反撃に向かうということなのか?)
まさにそうだね。だから、<Part 1>は敢えて意図的に(続く)という余白を残してある。そして、<Part 2>はその荒涼としたイメージの「Red Desert」から、「The Runner」で幕を開けるんだ。この曲は意思とビジョンを持って突き進む、サバイバルを表現した曲。それが両アルバムを通して伝えたかったことだ。音楽的には、この曲はリフから入ったんだよね。だから、リフが気に入って演奏していて楽しい曲だよ。
ーークライマックスのラスト・ソング “Neptune” は宇宙の彼方のブラックホールに吸い込まれていくような感覚を覚えますが、この曲で伝えたかったことはなんでしょう?最終的に「希望」に繋がっていくのでしょうか。
この曲は全てのカオスや混乱からの脱出、Departure を表現したもので、希望、とまで言い切れるか分からないけど、とにかく走り続けることの大切さを両アルバムで伝えたかったんだ。
ーー3月には来日公演も控えています。この2作を聴き終えたあとではイメージする映像や画像と共に完全再現を望みたいところですが、どのようなライヴになりそうでしょうか?
また日本でライブができることがとにかく嬉しい。今まさにビジュアルをどうするか相談しているところなんだ。期待に応えたいね。サマソニとはもちろん違うセットになるし、よりよいライブになることを目指すよ。また会えることを楽しみにしているよ!
ーー何かこれまで来日した際の日本の思い出、そして日本のファンへのメッセージをお願いします。
日本のファンで一番驚くのが、俺たちの音楽への細やかで真摯な聴き方で、それがとてもありがたい。例えば音楽からイメージするアートワークなどをよくもらうんだ。それがレベル高くてね。また、手作りのプレゼントをくれる率が一番高いのが日本のファンで、文句なしに一番クオリティが高い。日本は本当にホスピタリティの国だと思う。初来日でメンバー皆が驚いたよ。とにかく日本のファンにまた会いたい。楽しみに待っていてほしい。