interview :
未だ謎のベールに包まれた注目の新鋭アーティスト、Ethan P. Flynn インタビュー

イングランドのハロゲイト出身のシンガーソングライター兼マルチプレーヤー、Ethan P. Flynn (イーサン・P・フリン)。FKAツイッグスの最新作『MAGDALENE』に参加後、自身の正式なアルバムをまだ発表していないにもかかわらずBサイド・トラックとレア曲を収録した『B-Sides & Rarities』をリリースするなど、未だ謎のベールに包まれた注目の新鋭アーティストである。今年2月末に行われた来日公演直後の Ethan が、バックグラウンドや独自のキャリア観などについて語ってくれた。

ーー FKAツイッグスの『MAGDALENE』では一部の曲の歌詞を手がけたり、キーボード、クラリネット、ピアノも担当していましたよね。 FKAツイッグスとの制作過程で印象に残っていることはありますか?

 マネージャーが彼女とのセッションをセッティングしてくれたのがきっかけだよ。その時は僕がコードを鳴らしてみて、彼女がそれに合わせてメロディを歌うような感じだったんだ。その制作スタイルを気に入ってくれたから、その後も僕がロサンゼルスに何度か行ってセッションをしたよ。

それ以来、彼女の他にも何人かのアーティストの作品を手掛けてきたけど、制作スタイルはFKAツイッグスの時と基本的には変わらず、僕がコードを鳴らして、これはどう?こんなふう?っていろいろ探りながら、その中で気に入って残っていったものを曲として形にしていくプロセスだよ。

ーー自身の音楽においても、歌詞からプロデュースまで、バックボーカル以外の全ての作品作りを手がけていますが、音楽的なルーツやバックグラウンドを教えてください。Instagram でテルミンを演奏していた映像もありましたが今でも演奏していますか?

 物心がついたときから音楽に興味を持っているよ。テルミンは15歳くらいに始めて今でも演奏しているんだ。その頃はエレクトロニック・ミュージックのプリミティブな形、つまりエンジニアとその楽器が最初に出会った時みたいな音楽にすごく興味を持っていた時期だった。すごく難しい楽器だから今でも上手く演奏できないけれどね。

昔から弾いていたのはギターなんだけど、それと同じ頃にパソコンにGarageBandっていうソフトが入っているのを知って音楽を自分で作り始めたんだ。10歳か11歳ぐらいの頃だったよ。

ーー当時影響を受けていたアーティストはいますか?

その当時聴いていた音楽と、幼少期に聴いていた音楽が混ざり合っていろいろな影響を受けていたよ。覚えているのは、Sparklehorse をコピーしていたこと。あとはニール・ヤングが大好きだった。

ーー今はソロで活動されていますが、過去にバンドを組んでいたりもしたのですか?

 うん、本当にたくさんのバンドを組んでいたよ。バンドというのは、ミュージシャンが音楽を演奏することやコラボレーションを学ぶ場だと思っていて、僕自身バンドではいろんなことをやってきたよ。今の作品と比べるとちょっとヘビーな音楽をやっていた時期もあって、そのバンドではサックスやクラリネットを担当していたよ。別のバンドでドラムを叩いていたこともあって楽しい時代だった。

今はオフィシャルにはどのバンドにも所属していないけれど、時々誰かと演奏したりとかはするよ。でもバンドはまたやってみたいな。

ーープロデューサー、ソングライター、プレイヤーという音楽制作における総合的な目線から見て「このアルバムは完璧!最高!」という一枚はありますか?

 ボブ・ディランの『血の轍(Blood on the Tracks)』。歌詞がものすごく濃いのに、シンプルで分かりやすいものだから。落ち込むような歌詞なのに音楽自体は高揚感のあるところが好きだよ。

ーーすでに何度も聞かれている質問かもしれませんが…まだファーストアルバムも発表していない段階で『Bサイドと稀少曲集(B-Sides & Rarities)』という名のアルバムを発表しました。意図やこだわった点は?

 この作品に入っている曲が自分のリアルな音楽とは思えなかったから。つまり、今は他のアーティストのために曲を書いている時期にいるというか。老人のつもりで曲を書いていて、自分がこれからどんどん若返っていくイメージが頭の中にあるんだ。今は人のためにBサイドの曲を書いたり、ちょっとしたいろいろな曲をばらばらと書いているけれど、これから若返るにつれて自分のキャリアの最盛期や一番ダメな時期を通過していって、最高の作品や出来の悪い作品を作っていく…というようなことを想像しているんだ。だから、一番初めの段階である今の時期は、キャリアの終わりに差しかかって人のために書いているような曲を集めた、というのがこの作品のテーマになっているよ。

ーーアルバムのタイトルからまったく異なるタイプの曲がランダムに入っているかと思っていたのですが、サウンドも歌詞も全体的に統一感がある感じがしました。自分と君(恋人もしくは好きな人)との関係性、愛と憎しみを歌った曲が多い印象を受けました。 7曲それぞれ制作時期はばらばらでしょうか?

 7曲全て2016~2017年に書いたものなんだけど、初めてロンドンに出てきて、音楽大学に入ったけど中退して、という時期だったんだ。その頃は何の成功もなく、一人で暮らしていて。そういった特別な時期の特別な場所から生まれた曲だから統一性があるのかもしれない。ただ、アルバムを作るために書いたわけじゃなくて、たまたま特別な状況から生まれた曲だからそう感じるのかもしれないね。

ーー『I was on your side』の中に「I’m a loser won’t you kill me?」という歌詞があり、BECKの『Loser』の「I’m a loser baby so why don’t you kill me?」の部分を連想したのですが、やはり意識したのですか?

 そうだよ!BECK大好きなんだ。もちろんそれを意識して書いた曲だから、パクりだね(笑)。BECKのあの時期の曲はすごく笑える歌詞が多くて、それにインスパイアされて、そんな歌詞を書きたいと思って書いたことは確かだよ。

ーー東京でのライブはいかがでしたか?

 特別なライブになったよ。ただ曲を演奏するだけでいいんだっていう気持ちになれたライブだった。ロンドンのオーディエンスはシニカルなところがあって、良い悪いをジャッジされているような気持ちになるけど、東京のライブではそんなことはなくて、オーディエンスが純粋に僕の曲を聴いてくれていると感じたよ。

ーー『Bサイドと稀少曲集(B-Sides & Rarities)』のリリース元である原宿のレコードショップBIG LOVE RECORDSでは何かいいレコードを見つけましたか?

 まだゆっくり見ていないけれど、すごくいいお店だから日本を発つ前に絶対に買い物しに行くよ!

ーー今回の日本での滞在で、今後の制作に生かせそうな印象的な出来事やインスパイアされたことはありますか?

 うん、基本的に全てにインスパイアされたから、今後の制作に生かせると思う。もちろん「日本にいた時に~」みたいに直接的に歌詞にするわけではないけど(笑)。今回得た印象や断片は何かしらこれからの曲の中に現れると思うよ。

ーー2017年のBoiler Roomの映像を拝見しました。Jamie xxも以前Boiler Roomの映像で同じ場所でプレイしていたので、恐らくレーベルYoung Turksのビルの屋上ですよね。Young Turksの所属アーティストとは以前から付き合いがあるのですか?

 
 レーベルメイトとは頻繁に会っていて友達になったりしているんだけど、一番仲が良いのはLewis Roberts(Koreless)だよ。FKAツイッグスの仕事を通じて知り合って、今かなり仲が良いんだ。

ーー先日食品まつり a.k.a foodman と otta とセッションしている映像を拝見したのですが、リラックスして楽しそうな雰囲気が印象的でした。ロンドンのレーベルHighballからリリースされた食品まつりのEPのレコーディングに参加したということでしょうか?

 曲を一緒に作ったことは作ったけど、それが彼の新作に入るかとか、どう使われるのかは分からないんだ。でもセッションは楽しかったよ。ottaことAnnaは昔からよく知っているけれど、自分は異なる言語を話すアーティスト、つまり音楽しかコミュニケーション手段がない人と曲を作ったのは初めてだったからすごくおもしろかった。

ーーJockstrap のビデオに出演したり、ファッションモデルをしたりと音楽だけにとどまらないマルチな活動から目が離せません。今後の予定をお聞かせください。やってみたいことはありますか?

 自分がやりたいことはとにかく音楽を作ってハッピーでいることで、それが今後どういうふうになっていくのか、っていうシンプルなことしか考えていないよ。Jockstrapとは昔から仲が良くて、友達だからビデオに出演してって頼まれたから出ただけなんだ。今後そういうことがないとは言えないけれど、友達に誘ってもらってクールなプロジェクトだったら是非やってみたいな。

モデルに関しては…僕は別にハンサムなわけじゃないからね(笑)。でも誘われて楽しそうだったらやるかもしれないし、やらないかもしれない。モデルをこれから続けていこうという気持ちは特にないよ。