NYブルックリンのソングライター h. pruz、セカンドアルバム『Red sky at morning』を 11/7 リリース!先行シングル「Arrival」のミュージックビデオを公開しました。あなたの背後には、緑と青の万華鏡のような景色が広がり、轟く波が木立を飲み込み、地平線の彼方へと消えていく。
[TURN BACK] [ENTER] (戻る / 入る)
あなたは魅惑的な廃墟へと足を踏み入れる。扉は、手のひらが剥がれかけた塗装に触れる前にひとりでに開き、あなたの到来を待ち受けていたかのように軋む音を立てる。柔らかな音がこちらに近づいてくる。それはかすかな猫の鳴き声にも、古びた戸棚のきしみにも聞こえるほど曖昧で優しい音。ロッキングチェアは空のまま、誰も座っていないのに、まるで宿命に導かれるように揺れ続けていた。そこには、かつてこの家に響いていた愛の余韻がまだ残っているかのようだった。
[LEAVE] [TAKE A SEAT] (退出 / 着席)
壁が色づき、記憶が映像のように浮かび上がる。ほとんど捨て去られた人生の足場に光が漏れ込み、部屋を満たす。窓の外には赤い空が広がり、室内の空気は濃密で、不穏な気配に満ちていた。ここには誰もいない──しかし、ついさっきまで人がいたのか? それともすぐに戻ってくるのか?
[CONTINUE] (続行)
ハンナ・プルジンスキーにとって、「避難所を探し続ける」感覚は馴染み深いものだ。ペンシルベニア東部の保守的な地域で育った彼女は、幼いころから秘密の創作場所や自己表現の安全地帯を見つける術に長けていた。「母は、私が言葉を話すより先に歌っていたと言うんです」とプルジンスキーは語る。子どもならではの理解──言葉では表現できない感情を歌で伝えていたという。だが彼女は長い間、人前で歌うことを拒んできた。家族や友人の前でも歌わず、車の中でも声を出さなかったほど、不安と恐怖に縛られていた。
11歳年上の兄は、保守的な世界の外にあるものを彼女に垣間見せてくれる存在だった。音楽を奏で、ピアスをし、緑のモヒカンをしていた兄は、別の生き方の断片を彼女に見せてくれた。そうした記憶は深く彼女の心に刻まれている。
18歳でニューヨークに移り住んだプルジンスキーは、創作の自由を育むのに欠かせない環境を得た。大都市の匿名性と日常の邂逅は、彼女に新たな魔法のようなインスピレーションを与えた。
十数年を経て、彼女のニューヨークへの愛着はさらに強まり、現在は親友セシ・スターマンと共に「Sister.」というプロジェクトで活動。また、音楽ジャーナル「GUNK」を運営し、地元アーティストのための発表や交流の場を提供している。
新作『Red sky at morning』は、安定や愛の中で芽生える不安や自問自答を掘り下げた作品。タイトルは古代から伝わることわざに由来し、聖書にも引用されている。
・夜の赤い空は船乗りに喜びを
・朝の赤い空は船乗りに警告を
つまり、不吉な兆候を知りながらも前進する勇気を描いているのだ。
アルバムは雪の結晶のような記憶を一つずつ掘り起こすように紡がれ、フォークを基盤にした繊細な音像の中で、愛・恐怖・執着といった感情が鮮烈に表現される。「Arrival」では依存と制御のせめぎ合いを、「Your Hands」では不確実性の中でも他者を愛し続ける決意を歌う。
サックスやシンセが重層的に広がる中、楽曲はときに未完成さや不完全さすら抱えながら、彼女自身の内面を率直に映し出す。母から聞かされた赤い空のことわざを手掛かりに、彼女は幼少期からの創作への回帰を果たしつつ、孤独と依存の狭間で自分自身を解放しようとする。
『Red sky at morning』は、愛という混沌に身を委ねながら、自分自身と静けさを受け入れていく航海の物語である。2024年3月に発表したデビューアルバム『No Glory』以来となるスタジオアルバムです。