ニュージャージー州モンクレア出身のインディーロック・バンド Forth Wanderers、ニューアルバム『The Longer This Goes On』を Sub Pop から 7/18 リリース!ニューシングル「Bluff」のビジュアライザーを公開しました。Forth Wanderers が3枚目のアルバム『The Longer This Goes On』のリリースに向けて準備を進める中で、はっきりさせておきたいことがある。それは、「僕たちは “復活” したわけじゃない」ということだ。ギタリストのベン・ガテルはそう強調する。それは、バンドが7年の別離を経て初めて出すアルバムにしては意外な言葉かもしれないが、彼らにとっては正直な気持ちの表れだという。彼らはこの新作に収録された10曲を録音するために再集結したが、Forth Wanderers という存在が結成から10年以上を経た今、自分たちにとってどんな意味を持つのか、まだ模索しているところだという。
先行シングル「To Know Me/To Love Me」を公開!
しかし、ヴォーカルのエイヴァ・トリリングの切迫感ある直感的な歌詞と、バンドの自然な音楽的化学反応が見事に融合したこの楽曲群を聴くと、もはや言い尽くされたかのような完成度すら感じられる。艶やかなメロディ、鐘のようなハーモニー、ひねりの効いたリズムが印象的なこのアルバムは、単なる原点回帰を超えた広がりを持っている。バンドはフックにたどり着くまでにあえて回り道をしたり、楽器の装飾を重ねて余白を埋めたり、トリリングの幽玄な声域に空間を与えたり、リフや歌詞を繰り返すことで、まるで禅問答のような感覚を生み出している。『The Longer This Goes On』における Forth Wanderers は、かつてないほど自己認識が深まり、自信に満ちている。ただし、“カムバック” とは呼ばないでほしい。
セカンドシングル「7 Months」のMV公開!
このアルバム制作の道は、2021年夏、ブルックリンのカフェで始まった。そこでガテルとトリリングは、2018年の解散以来初めて再会した。「4、5時間かけてあらゆることを話したの」とトリリングは語る。「その会話の最後に、ベンが “また一緒に音楽をやってみない?” って聞いてきたの」。予想外の提案だったが、トリリングは了承した。バンドが前作をツアーで回っていた頃に感じていた重圧は、3年間の空白で和らいでいた。「もうバンドに賭けるものがそこまで大きく感じなかった」とガテルは言う。「自由に遊べるようになったし、楽しめるようになった」。ベーシストのノア・シフリン、ギタリストのデューク・グリーン、ドラマーのザック・ロレリと再び音を合わせたとき、ガテルは「バンドを始めた高校時代に戻ったような感覚だった」と振り返る。
今回、彼らは楽曲制作の方法も根本から見直した。「以前はベンが送ってくれるデモを元に曲を作っていたけど、今回は多くの部分が自然発生的に生まれたんだ」とシフリンは語る。「5人全員が、今までとは違った形で作曲に関わった」とガテルも付け加える。そのコラボレーションの成果はアルバム全体に表れている。例えば「Honey」は、反響するギターとトリリングのとろけるような歌声から始まり、ゆったりとしたメロディを紡いでいく。ドラムが加わると疾走感を増し、最終的には天国のホンキートンクのような至福のディスコに変貌する。「Springboard」では、ギターが溶けるように鳴り、トリリングの歌詞が想像上の観察者への視線をねじるように問う。「私のダンス、見たい?」と。
一方で「Barnard」は、ドラムの力強いビートで始まり、ギターのリフを花火のように重ねながら、最後まで勢いを止めないポップ・ラッシュ。「Bluff」はクールなキーボードと打楽器で始まり、トリリングの声が曲を内省的な核へと導く。プロデューサーのダン・ハワードの手腕の下、バンドはこれまでになく “今” に集中し、リアルタイムで音を作り上げている。
解散からの時間は、バンドにとって必要な成長と反省の時間にもなった。「謝ることや、過去に向き合うこと、若い女性が男ばかりのバンドでどんなに大変だったか認めることができるようになった」とシフリンは語る。当時はまだ10代だった彼らの音楽は、ロードなど著名アーティストからも注目されていたが、今は大人として再会できたことに意味がある。「私たちは “変わった” というより、大人になった」とトリリング。「今は、ジャンルやスタイルのラベルに縛られずに、ブルースっぽいもの、カントリーっぽいもの、スローでダークなもの、何でも試せるようになった」。
実際、アルバム全体にはカントリーやブルースの熱量が漂っている。「Make Me」のうねるベースラインから、「Spit」の糸を引くようなメロディまで、トリリングの歌詞の誠実で鋭い感情にぴったりだ。「To Know Me / To Love Me」では、「助け起こさないで/横たわっていたいの。舌を動かして/声を出したいの」と歌い、圧倒されたようでもあり、もうどうでもいいようにも聞こえる。「7 Months」では、不眠の夜と寝込んだ日々を歌いながら、“あなた”がそばにいてくれることを願う。
こうした告白は、誰もが共感できる恋愛の不確かさを描きながらも、あまりに具体的で実体験でなければ書けないようなものだ。Forth Wanderers の楽曲が、広く共感されつつも鋭く心に刺さる理由はそこにある。『The Longer This Goes On』では、その力がさらに深まっている。
Forth Wanderers は、今後どうなるか分からないという。新しい音楽を作り続けるのか、今回の曲をライブで披露するのかすら未定だ。だからこそ、この10曲は、彼らがバンドとして過ごした時間の一瞬一瞬をとらえた貴重な記録だ。運命のようにスポットライトを浴びた高校時代の仲間たちの再会。未来の不確かさと、今この瞬間への確かな自信が共存する音楽。Forth Wanderers は、今、自分たちのペースで音楽を作っている。