NYブルックリンのファミコン・バンド/チップチューン Anamanaguchi が手がけたアクションアドベンチャーゲーム『Scott Pilgrim EX』のオリジナル・サウンドトラックが 3/3 にリリースされました。『Scott Pilgrim EX』――シリーズ原作者のブライアン・リー・オマリーが共同脚本を手がけ、Tribute Games が開発した「Scott Pilgrim」フランチャイズ最新作ゲーム――がついにリリースされた。本作には、Anamanaguchi による全編オリジナルの新作サウンドトラックが収録されている。
全71曲におよぶ壮大なサウンドトラックは、テキサス州ダラスの Valve Studios にて、Casey di Iorio(Andre 3000、Slayer、Marvel Studios などを手がけたプロデューサー)と共にレコーディングされた。バンドの伝説的なエレクトロニックなルーツと、現在のファズが効いたガレージロックのサウンドを融合させながらも、彼らならではのパンチのあるスタイルは健在だ。これまでの作品でも世界観構築の巧みさで知られてきた Anamanaguchi だが、『Scott Pilgrim EX』では感情の深みと幅広いスタイルを披露し、新旧ファン双方に刺さるメロディックでエネルギッシュなフックを次々と生み出している。
Anamanaguchiと「Scott Pilgrim」ユニバースの関係は、バンド初期にまでさかのぼる。任天堂のカートリッジを実際に演奏可能な形でプログラミングし、インターネット発の8ビット・チップチューン・シーンを広く知らしめた彼らは、その後ファンに愛されたゲーム『Scott Pilgrim vs. the World: The Game』のサウンドトラック制作に抜擢された。この成功がきっかけとなり、2013年のデビューアルバム『Endless Fantasy』のクラウドファンディングは大きな成功を収める。その後も、バーチャルポップスター初音ミクとのコラボレーション(Fortniteにもフィーチャーされたヒット曲「Miku」)や、2ndアルバム『[USA]』での緻密なサウンドスケープへと発展していくが、その歩みの中で Scott Pilgrim との結びつきは常に重要なインスピレーション源であり続けた。
2023年には Netflix アニメ『Scott Pilgrim Takes Off』の音楽も担当。バンドメンバーのピーター・バークマンとルーク・サイラスは、作中ガレージバンド「Sex Bob-Omb」の楽曲制作においてライブ的で躍動感あふれるエネルギーを取り戻したことが、自分たちの音楽の原点へと立ち返るきっかけになったと語っている。この流れはやがて、ギタリストの Ary Warnaar、ベーシストの James DeVito と共に、従来の緻密なデジタル制作から、よりコラボレーティブでアナログ志向の“直録り”かつ歪んだ衝動を重視した制作スタイルへと転換することにつながり、2025年の高評価アルバム『Anyway』へと結実した。この作品もまた、Scott Pilgrim との関係性から生まれた大きな進化のひとつである。
よりオーガニックなソングライティングへのシフトは、新作サウンドトラック制作においても重要な転機となった。Anamanaguchi は常にゲーム音楽を、他のどんな媒体にも劣らない重要な表現形式だと捉えてきたが、近年ではゲーム音楽が映画やテレビのスコアと同様に文化的に高く評価される時代になっている。その一方で、彼らは“ゲーム音楽が本来持っていた独自性”を守ることの重要性も強く感じている。
そのため『Scott Pilgrim EX』の楽曲の多くは、『Anyway』のツアー中にツアーバス内で最小限の機材を用いて制作された。あえて古いゲーム機向けのソフトウェアを活用することで、クラシックなトラッカー文化やチップチューンの制作手法を継承しながら、バンドが心から愛する作曲スタイルを守ろうとしたのだ。現代の高機能DAWが当たり前になった今、失われかねない表現技法を意識的に残そうとする姿勢がそこにある。
Anamanaguchi が Scott Pilgrim と共に歩んできた年月の中で、このフランチャイズ自体も大きく進化してきた。カルト的な人気を誇るコミック作品から、映画、アニメ、テレビ、ゲームへと広がる世代横断的な“成長物語”へ。コアファンにとってかけがえのない存在でありながら、同時に広く知られる大規模フランチャイズへと発展した。
そして今、全米ツアーを終えたばかりの Anamanaguchi は、再び8ビットのビートエムアップ世界へと帰還。ジャンルを横断しながらも猛烈なエネルギーを放つ『Scott Pilgrim EX』のオリジナル・サウンドトラックで、再びその名を刻む。クラウドロックやラップトップ・トゥイー、ローファイ・エレクトロニック・インディーといった新世代のリスナーが登場する中で、Anamanaguchi は “原点回帰” と “進化” を同時に体現し続けている。Scott Pilgrim のキャラクターたち、そして世代を超えて広がるファンベースと共に、彼らもまた進化し続けているのだ。













