interview :
「誰でもアーティストになれる」ー of Montreal の奇才、ケビン・バーンズ インタビュー

最新アルバムと共に、ここ数年毎年日本ツアーを行ってくれる of Montreal。今年は通算15枚目となるミドルテンポ〜スローテンポの楽曲、よりサイケ色を増したドラッギーな内容のニューアルバム『White Is Relic / Irrealis Mood』携えて、ケヴィンがプロデュースを手掛けたアトランタの新人アーティスト Locate S,1 と共に、長野のりんご音楽祭、山形のぼくらの文楽、2つのフェスを含む 9/16〜9/24 まで7都市10公演を駆け抜けました。indienative ではツアー中、of Montreal の奇才ケビン・バーンズにインタビューを行った。

photo by of Montreal Japan Tour 2018

最新アルバムの『White Is Relic/Irrealis Mood』ですが、タイトル、曲それぞれ2つずつ名前が付いています。この狙いは何ですか?

 僕が歌っているそれぞれの曲には多様なテーマがあって、一つに決めるということが難しい。ただ「アイ・ラブ・ユー」を歌っているような、単純なポップソングではないからね。それよりもっと複雑で、アイデアのコラージュのようなものだから、曲の真意を伝えることのできる2つのタイトルを選ぶことに決めたんだ。本当は数百ものタイトルをそれぞれの曲に付けたかったけれども(笑)、数百ものタイトルをつけるよりは気にならないので、2つのタイトルを選ぶことにしたんだ。

今回のアルバムはより80’sシンセポップの色が強くなったように思います。そのような音にした主な理由を教えていただけますか?

 なぜ僕がシンセポップ、ドラムマシンやシンセサイザーを使うのを好むのかというと、シンセサイザーが奏でる音が綺麗だからだと思う。また、僕はロックンロールの音を刷新したいと思っている。ギターやドラムセットを使うのは退屈になり得る。だから、音を微調整してオリジナルの音を作り出すということに可能性を見出している。調整すれば何百通りもの異なった音を生み出せるし、そう言った点でシンセサイザーは非常に面白い楽器だと思う。

ライナーノーツでは今回のアルバムでインスパイアされた人々を挙げていましたね。その中には、マルコムXやノーム・チョムスキーなど世界をより良い方向に変化させるために尽力した人物の名前がありました。聴いている人に何を感じ取ってほしいですか?また、今日の世界をどのように見ていますか?

 特に僕が聞いている人に感じてほしいのは、「パワーをもらった」ということ。また、自分の肌のことで抑圧されることなく、快適さを感じてほしい。(今日の)最も主要な問題としては、「富の分配」だと思う。なぜならば、社会がグローバル資本主義の方向へ動いていて、そこで人々は他人の弱みに付け込み、金と利欲に重きを置いているからで、これは病理的なものだ。

人類が他の方法で自尊心を高める方法を見つけていくのは難しい。これはお金の問題じゃないんだ。アーティストとしては、アートを創作することによって僕は自尊心を得ている。しかし、アーティストではない人の多くは、自尊心をお金を得ることによって得る傾向がある。当然、誰でもアーティストになることは可能だ。アートを作らない人でアートに敬意を払わない人にはもっとアートを評価してほしいと思うし、金銭的な収入やステータスシンボルのような、見せかけだけのものに基づく宗教を作るのをやめてほしい。

アメリカでは、考えられる中で最悪な人々が国を動かしていて、そういった最悪な人々が文化や社会に影響をもたらしている。金と利欲が根底にあって、人道主義も、愛もない。この状況はマイナスだし、嫌悪すべきであるし、残酷だ。だから、僕はこの状況が180度転換するところを見たいし、実際に転換させたいんだ。僕らはこのようなモンスターを乗り越えて温かい心を持ち、優しく、平和主義で、多文化主義は国にとって避けるべきものではなくプラスに働くと考える、知的な人々と交代させるんだ。

全ての人がそうではないけれども、権力を我が物にしたいという白人は白人の優位性を根拠にしていて、それは世界的な人種差別の原因になっている。これは恥ずべきことだし、アメリカに住むということを脅かすことでもある。アメリカは素晴らしい国になる可能性を持っていると思う。もし彼らがお金を世界中に分配し、搾取したり抑圧したりするのではなく、人々の生活が良くなっていけばね。

以前にゆるめるモ! と一緒にステージに立ったことがあったと思いますが、どうでしたか?

 彼女達のライブを見てどのようなパフォーマンスをするのか分かって楽しかったよ。ステージ上では、エネルギーに満ち溢れていたし、すごくプロフェッショナルなところが好きだ。多くのインディロックバンドは作品に対して怠惰になりがちだし、雰囲気だけの、ムーディーなものになることがある。僕も人のことは言えないけどね(笑)彼女達のプロ意識やエネルギーには刺激を受けたよ。

りんご音楽祭や大宮など、東京や大阪だけでなく小規模の場所や郊外も回っているようですが、どのように場所を決めているのですか?

 レコードレーベルのユウヤがどこで演奏するかを決めてくれている。多くのバンドは東京や大阪などしか回らないから、小規模の場所も回ってほしいみたいだ。小規模の場所や郊外などインディー的な場所で演奏できるのは僕たちにとってはクールなことだ。

日本のインディーロックシーンをどのように見ていますか。

 僕が一緒に演奏してきたどのバンドも、日本では楽器の演奏の練習に非常に多くの時間を割いているように感じる。日本のバンドは楽器の演奏で評価を得ることや良い奏者であることを好む。アメリカではパンクロックのような荒削りなものでも人々が満足している。それも楽しいし、問題だとも思わないけれども。日本に来ると概して高いレベルのミュージシャンシップに触れることができるし、どんな環境でも、例えば小さなステージ、小規模のPAだとかそういった条件下でもバンドが演奏することができる。日本のバンドがやってることは面白いし、注目しているよ。

インタビュー/翻訳 : Lisa Tominaga