USローファイ・シーンの若きカリスマ SNAIL MAIL、稀代の才能の存在を見せつけた東京公演ライブレポートが公開!

SNAIL MAIL

photo by Kazumichi Kokei

USローファイ・シーンの若きカリスマ 、会場を埋め尽くしたオーディエンスに稀代の才能の存在を見せつけた東京公演のライブレポートを公開!USボルティモア発、今年リリースした初作『Lush』でシーンの若きカリスマとなった19歳のシンガー・ソングライター、リンジー・ジョーダンことスネイル・メイルが待望の初来日公演を行った。30分すぎて会場の東京・渋谷WWW Xに着くと、すでにフロアの大半が埋まっている。「人、多いねー」という感嘆の声があちこちから聞こえた。この日の会場SEは、筆者のわかる範囲では、終始ビビオがかかっていたように思う。ジャンルで言うならフォークトロニカだが、柔らかなギターの音が特徴のドリーミーなサウンドスケープは、スネイル・メイルの最初期の作品『Sticki』(2015年)を彷彿とさせた。男女比は、意外にも(?)男性7割といったところか。とはいえ、年齢層は幅広く、90年代のオルタナ直撃世代と思しきグランジーなミドルから、いかにもBIG LOVEに通い詰めてそうなインディー・ボーイズまで、スネイル・メイルがいかに世代を越えてリスナーを熱狂させているかがわかる。

19時20分に差し掛かろうかという頃、メンバーが登場。今回の来日の編成はリンジーを含めて4人。どこの街にでもいそうな女の子&男の子たちで、特にサポートを務める3人はまさにナードだ。良く言えば飾らない、意地悪に言えばなんとも冴えない風貌が、むしろ好ましい。知人が「近所の友達を連れてきたのかと思った」と漏らしていたが、それも言い得て妙。地方都市のインディー・バンドが、馴染みのライヴハウスで演奏するかのような佇まいのホーム感が、オーディエンスも染めていく。

まずは、サイケデリックなジャムでスタート。正直、サポートの面々の演奏はかなり心もとない。が、リンジーはギタリストとしても卓越している。エフェクターで音色を変えながら、独特のうねりを作り出す。そして、2曲目は“Heat Wave”。緩やかなギター・アルペジオにリンジーの歌声が乗ると、一気に会場の空気が変わる。この曲も含め、ライヴでは音源よりもテンポを落とした演奏で、それゆえ楽曲のオーセンティックな魅力が顕わになっていた。少しポップ・カントリー的な味わいもあり、シェリル・クロウや初期のテイラー・スウィフトを思わせる瞬間も。

続けて、“Dirt”、“Slug”と2016年のEP『Habit』から立て続けに演奏。リンジーがはにかみながら「ライク・ア・ビッグ・ドリーム」と話すと、観客も負けじと「ユー・アー・ザ・ベスト・シング、リンジー!」と大声で返す。さらに、“Thinning”は、ライヴ前半でいちばんの盛り上がり。この曲をきっかけに彼女をしったリスナーも多いのだろう。雲の隙間から青空に突き抜けるかのような開放感が胸をつく。そして、中盤に披露された、幻惑的な“Speaking Terms”とドリーミーな“Let’s Find An Out”には、まるで彼女のベッドルームで歌を聴かせてくれるような親密さがあった。

その一方、“Full Control”、“Pristine”などエモみを堪えた楽曲では、コーラス部分の叫びに神聖さが宿っていると言っても過言ではない。後者で鮮烈な印象を残す〈決して他の人を愛することはない!〉というフレーズについて、彼女は若さゆえの大袈裟な気持ちを描いたと語っていたが、そうしたエクストリームな想いは誰しもが抱いてしまうもの。それゆえに、この日のライヴにも多くの世代の男女が集まっていたのだと思う。

青色の照明と相まってムードたっぷりの“Deep Sea”に続いて、アルバム『Lush』で最後を飾った穏やかな“Anytime”。ここでメンバーは下がり、彼女1人の弾き語りに。拍子に束縛されないメロディー・ラインの流暢さが、わかりやすく伝わってくる。心地良い波に運ばれながら、大海を漂っているかのような気分にさせてくれるのだ。そして、そのままコートニー・ラヴのカヴァー“2nd Most Beautiful Girl In The World”をパフォーマンスして、本編が終了。この楽曲は90年リリースの7インチ、さらにB面に収録された、かなりマニアックなナンバー。実際、筆者も知らなかったのだが、会場のグランジ世代はその選曲に唸ったに違いない。

もちろんアンコールの声が鳴りやまず、バンド4人で再登場。前々日の大阪では、アンコールをやらなかったと聞いていたので、これは嬉しい。『Habit』収録にされた、3連リズムの“Static Buzz”を演奏してくれた。残ったパワーをすべてぶつけてやるぞ、と言わんばかりのアグレッシヴな演奏は、この日屈指のパワフルさ。ここにきて、ようやく緊張が解けたような感もあった。

特にバンドの演奏面は、拙さもあったかもしれない。また、彼女自身さえも、自身のポテンシャルをまだ完全にはコントロールしきれてないような危うさも垣間見えた。とはいえ、初の来日公演は、会場を埋め尽くしたオーディエンスに、稀代の才能の存在を刻印したという点で、大成功と言えるだろう。少なくとも、ここにいた人の多くが今後「俺はスネイル・メイルの初来日にいた」と自慢気に語ることは間違いない。

Text by Ryota Tanaka

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